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Double diamond

Category3万HIT記念
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日頃より当ブログにご訪問いただき、誠にありがとうございます♪
おかげさまで、この度3万HITを記録いたしました。とっても嬉しいです!
HIT記念として、今回もSSをお送りしようと思います。
出来の良し悪しは別にして、ようやくSSの書き方に慣れてきた今日この頃…。

それでは、どうぞお楽しみください(*'▽')





『Double diamond』



「わぁ、すごい。綺麗…」
つくしは類に手渡された資料を見て、キラキラと目を輝かせた。
「これが、本当に見られるの?」
「俺としては、ダイヤモンドでもパールでもどちらでもいいんだけど」
そう言って、類はにっこりとつくしに笑う。
「つくしは、どっちが見てみたい?」
「…やっぱりダイヤの方。すごく素敵。このダブルダイヤ、実際に見てみたいもん」
「了解。パールの方はいろいろ条件も難しいから、こっちの方がいいかもね」

類はスマートフォンでカレンダーを確認する。
「10月27日にしようか。車で迎えに行くから待ってて」
「どうしよう! 今からすっごい楽しみなんだけど…」
そう言って無邪気に類を見上げたつくしに、類はもう一度にっこり。
「…でさ、その日は泊まりでいいよね。週末はずっと一緒にいよ?」
途端につくしの頬がぽんっと赤く染まる。うつむきながら返事がある。
「……いいよ」
「なんでそこで照れるのさ? もういい加減に慣れてよ」
シャイな彼女をからかうように言った類に、つくしからは無言の手拳が返った。

二人が付き合い始めて3ケ月。
つくしは、今もまだ類のこうした甘い“口撃”に慣れない。
類は彼女の手拳を受け止めつつ、楽しそうに笑った。



**********



10月27日、土曜日。
約束通りの時間に、類はつくしをアパートまで迎えに行った。
「晴れてよかったね!」
後部席に荷物を乗せ、助手席に座った彼女に類は笑う。
「あんたってすごいね。一緒に遠出する日に雨だったことがない」
「あれ? あたしは類が晴れ男なんだと思ってたよ」
車はゆるやかに発進する。彼のドライビングテクニックも、つくしを乗せるようになってからみるみるうちに上達した。


車は一路、山梨県の山中湖を目指す。約2時間のドライブは滞りなく終わり、午後3時前には、二人は湖岸のある地区に着いた。
「一眼レフを持っている人が多いね」
「絶好の観測スポットだからね。これからまだ混雑すると思う」
類はつくしの細い肩を優しく引き寄せる。
こうした触れ合いが自分達の日常になったことが、今でも嬉しくて仕方ない。
「もうポイントで待とう」
「うん!」
二人は多くの観光客がそうしているように、湖岸を眺望できるスペースの端の部分を陣取った。
今日の日の入りは午後4時過ぎ。
つくしと類は手すりに凭れ、他愛もない話をしながら、その瞬間を待つ。


二人がここを訪れた目的は、“ダイヤモンド富士”の観測。
富士山の山頂から朝日が昇る瞬間、あるいは夕日が沈む瞬間、山が太陽を頭上に戴き、それがまるでダイヤモンドのように光り輝く様をそう呼ぶ。太陽に対し、月が昇る瞬間、沈む瞬間の、山が月を頭上に戴く様を“パール富士”と呼ぶ。
それらの現象はいつでも、どこでも観測できるわけではない。
まず観測ポイントは、富士山の東側か西側に限局される。
太陽や月の軌道は日々変動し、入出の時刻も少しずつずれていく。
二人が選んだこの場所で、ピンポイントにダイヤモンド富士が観測できるのは、年にたった2回なのだ。

数ある観測ポイントでも、ここ、山中湖が人気を集めるのは“double diamond”が観測できるから。気象条件に左右されるが、山中湖は富士山をその湖面に映し、逆さ富士を演出する。
山と湖面の両方で輝くダイヤモンド富士は、絶景として広く知られている。


「…寒い?」
つくしが小さく身震いしたのを、類が気遣う。
風はほとんどないが、周囲の気温は下がり始めている。
事前の備えでいつもよりは着込んできてはいたが、肌寒さは否めない。
「うん。ちょっとだけ」
「こっちにおいで」
類は並んで立っていたつくしを引き寄せる。腕の中のスペースに入れ、彼女を背中側から抱き込むようにして、そのまま両手で手すりを掴む。
周囲には多くの観光客がいるので、つくしは当然恥ずかしがった。
「…類…あのね…」
「照れない、照れない。他の人は富士山見るのに忙しいんだから、俺達なんて見てないよ」
「…そ、そうかな」
「ほら、あんたもちゃんと顔上げて。…はい、グラス」
類に促され、つくしは、照れてうつむきがちだった顔を上げた。
手渡された日食グラスをかざして、沈みゆく太陽を見つめる。


霊峰がそびえ立つこの地区では、他の地域より日の入りが早くなるが、実際の太陽高度は高いままだ。そのため空はまだ朱に染まることなく、その青さを保っている。
不思議な光景だ。
まだ青い空の中を、太陽は富士に沈んでいくのだ。


やがて、待ちわびた瞬間が訪れた。
わぁ、と辺りから歓声が上がる。つくしも思わず声を上げていた。
「…綺麗!」
「うん。凄い光景だね」
太陽が山に接する。
山頂から放射状に放たれる光は、まさにダイヤモンドの輝きのようだ。
湖面に映る逆さ富士も煌めきを返し、ただただ美しい。
太陽は徐々に山の後ろに隠れていき、遮られた分だけその光量を落としながら肉眼でも観測しやすくなっていく。
二人は日食グラスを下ろし、次第に消えゆく光を言葉もなく見送った。

惜しまれるほどにその時間は短く、つくしは感嘆のため息をついた。
「…あぁ、本当にあっという間だったね」
「うん。…でもさ」
類はつくしをそっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「記憶はずっと残るよ。今日ここで、二人で見たって思い出は」
「そうだね。…あたし、ずっと忘れないよ」


「…で、そう遠くない未来に、本物を渡すから」
「ん?」
「こっちの話」
類は、手すりに置かれたつくしの左手の薬指に、指先でちょんと触れた。
あ、という小さな声が洩れて、つくしがうつむく。
「また照れてる? 早く慣れなってば」
「……無理だよ。ホントに、無理」
つくしの肘鉄が類の脇腹にポスッと入り、類はまた楽しそうに笑った。
「………………」
つくしがごにょごにょと何か言った。その声を拾えずに類が訊き返す。
「え…。なに?」
「…待ってるから、ね?」
類は満面の笑みになる。
「ん。楽しみにしてて」



―もっと、もっと、たくさんの思い出を作ろうね。
―うん。

暮れなずむ空を見上げながら、二人の想いは重なり合う。




~fin~






いかがでしたか?
ジュエリーの話かな?と思わせつつ、自然現象の観測のお話でした(^^♪

最近の夕方のニュースで、たまたま“パール富士”の映像を見ました。
ネットで詳しく調べてみると、“ダイヤモンド富士”なる現象もあることも知り、二人のデートのお話にいいなぁ…と。
富士山からは遠く離れた地域に住んでいるので、実際に見ることは叶いませんが、想像だけで書いてみました。認識の誤りがあったときはすみません<(_ _)>

掲載OKのフリー画像ではその写真を探せなかったので、興味のある方はぜひワード検索で調べてみてくださいね。素敵な写真がたくさん載せてあります。
写真には夕景のものもありますが、青空の中を富士に沈む太陽、という表現が分かっていただけるものもあります。個人的にはそちらの方が素敵だなぁと感じました。



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明日午後10時もちょっとしたUPを行います。
こちらも個人的な趣味なので、気が向いたらチェックしてみてくださいませ。
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2 Comments

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2018/09/13 (Thu) 23:44 | REPLY |   
nainai

nainai  

ま様

おはようございます。
いつもコメントありがとうございます(^^♪

SSはお楽しみいただけたでしょうか? 気象条件に左右される自然現象の観測ですが、絶好の条件だった…ということで。この二人は付き合い始めなのでまだまだこれからなんですが、素敵な思い出をたくさん作っていくのだろうと思います。

私の現実世界も、ま様と同じですよ(笑) 現実はあぁですけれど、想像は自由ということで、これからも素敵な妄想タイムを過ごしていきましょうね。

2018/09/14 (Fri) 06:43 | REPLY |   

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