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Category第3章 縒りあうもの
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「お前も思い出してみろ。記憶のあるところまででいいから。…俺達4人が、どんな学校生活を送ってきたか」
あきらに言われた通りに、俺は記憶を辿ってみる。
小中高を通じて、学校生活を楽しいと感じたことはほとんどなかった。
信頼できるのは、あきら達3人と、司の姉の椿と、静だけ。
ごく狭い交友関係。
周囲は俺達をF4と称し、背後に控える家を意識し、媚びへつらってくるだけの存在だった。俺達がどんな行動をとろうと、周囲はそれを許容あるいは黙認した。

「マイペースな集団だったろ。俺らは。…特に、お前と司は、協調性なんかまるでなかった」
「……あぁ」
他人が俺をどう思うかなんて気にしたことがなかった。
自分がしたいように物事を進めてきた。
…いつでも、どんなときでも。
「牧野と出会って、俺達はそれぞれに変わった。でも、それは時間をかけた変遷だったんだ。だけど、今のお前は…」
「ガキだって言いたいんだろ。要は…」
「実際、そうだろ?」
あきらがニヤッと笑う。それをムッとしながら受け止める。
それでも、彼の言わんとすることは分かる。
総二郎も同じことを指摘していたから。
「…目が覚めてから、いつも自分を中心に物事を考えてた。…つくしがどれほど苦しかったか、俺には笑顔を見せてくれてたから、全然考えてもやらなかった」


「牧野はな、こう思ってるんだ。…お前にとって、自分はただ、都合のいい人間だっただけじゃないかって」
あきらの口調に、初めて怒気が混じる。
―都合のいい人間?
「それ…どういう意味?」
「言葉通りだろ。…自分じゃなくてもよかったのかもしれない、と言ってたな」
ドクドクッと胸が不穏に高鳴った。
「そんなわけ、ない」
「俺に言ってもしょうがないさ。あいつがそう思ってんだから。……そんな台詞、言わせるなよ」
俺は、ほぞを噛む。


「…つくしは、あきらのところにいるの?」
「それには答えてやれねぇ。…約束させられてるから」
誰に、とは、あきらは言わない。
「…つくしに会いたいって、誰に言ったら、会うのを許してもらえる?」
「最終的に決めるのは牧野になるが…」
あきらがそこまで言ったとき、また場内からどよめきが上がった。気付けば和装コースの発表が終わり、アパレルコースの2巡目の発表が始まっていた。




**********




―あれは、類だった。

1巡目の発表が無事終わって舞台袖に戻ったとき、気分が高揚しすぎてクラクラとめまいがした。
暗い場内だった。見たのは一瞬だった。
でも、あたしは類の姿を見誤ることはない。

―来て、くれたんだ…。

涙がこみ上げそうになるのを辛うじてこらえる。
約束のことなんて、もう覚えていないんじゃないかと思っていた。
康江さんから類の話を聞く以外に彼の今を知ることはなかったから、この2週間、彼が何を想い、どう過ごしてきたかは分からなかった。
あんな一方的な別れ方をして、自分達は本当に終わってしまったかもしれない、とも思っていた…。

―まだ、あたし達に可能性はある?
―類は、こんなあたしでも、必要としてくれる?


「牧野さん、気分が悪いの?」
あたしの後に発表を終えた三河さんが、立ち止まったままのあたしを気遣ってくれる。告発騒動以後、口をきいてくれなくなっていた彼女も、館山さんとの和解後は、以前のように自然に接してくれるようになっていた。
「…大丈夫。ありがとう」
「次の発表まで時間ないし、行こう?」
うん、とあたしは応え、彼女の後ろに続いて控室に戻った。



―類に、分かってほしい。
―あたしが愛してやまない世界を。


控室に戻る道々で、他コースの生徒や2巡目の準備を終えたクラスメートとすれ違う。それぞれが3年間の集大成として作品を生み出し、今日という日を迎えた。
その秀逸さ、緻密さ、奇抜さに目を惹かれ、心躍る自分がいる。
類との価値観の相克に疲弊し、一度は手離そうと思ったこの夢を、結局あたしは捨てきれないのだ。
彼が満たすことのできる心の部分と、自分のやりたいことが満たすことのできる心の部分とは、きっと重なり合わない。欲深いと言われようと、あたしにはどちらも大切で、どちらも諦めることができない。


作品の2点目は、白を基調としたエレガントワンピースだった。
白のシフォン生地のところどころに黒を差し入れ、1点目のような甘さを見せないよう全体的に雰囲気を引き締め、大人っぽさを演出する。
得意の刺繍は盛り込まなかった。
あたしは童顔で、背もそんなに高くはない。でも同じ悩みを抱えている人は多いはずで、そんな人にもエレガントさを醸し出したいときに、着たいと思えるようなデザインを目指して作ったつもりだ。

発表を控え、再び列に並ぶ。
菜々美さんが舞台に出た時、会場がわっとどよめいたのを聞いた。
彼女の2点目も素晴らしい出来だった。
長身でスタイルのいい彼女は、自分の見せ方をよく分かっている。
本人は謙遜するけれど、ショービジネスに向いているとあたしは常々思っていた。
―あぁ、出番が迫る。
進行役に再び名を呼ばれ、あたしは2回目の舞台に立った。




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4 Comments

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2018/10/03 (Wed) 22:08 | REPLY |   
nainai

nainai  

桜様

こんばんは。ご指摘ありがとうございます!

ブログ村のリンク貼り付けの一ヵ所にコピーミスがあり、サイトにジャンプしなくなっていました💦 自分で気づいたところは直したつもりでしたが、まだ残っていたようです。
ありがとうございました<(_ _)>

連載はもう少し続きますので、最後までよろしくお願いいたします。

2018/10/03 (Wed) 22:18 | REPLY |   

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2018/10/03 (Wed) 23:09 | REPLY |   
nainai

nainai  

み様

こんばんは。いつもコメントありがとうございます。

第3章はしばしば視点が変わるので、全体の時間経過としては遅くなってしまいますよね。コンペはもう少し続きます。ジレジレ展開ですみません(;^_^A ここでは類の心の成長の過渡期を描いております。二人の今後のためにとても重要なシーンだと思っています。

二人がいつ再会を果たせるのか。いろいろなパターンを予想しながら、どうぞ今後の展開を見守っていてくださいね。更新、なんとか頑張っていきます!

2018/10/04 (Thu) 00:00 | REPLY |   

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