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Original

Category5万HIT記念
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日頃より当サイトにご訪問いただき、誠にありがとうございます♪
おかげさまで、この度5万HITを記録いたしました! 
たくさんの拍手や温かいコメントに日頃の感謝の気持ちを、ということで始めた記念SSですが、ネタが浮かぶ限りで頑張っていこうと思います。

それでは、どうぞお楽しみください(*'▽')





『Original』



アパートの狭いキッチンで、ちょこまかと忙しく作業するつくしを眺めているのが好きだ。俺のために料理をしてくれる姿はもちろん、皿を洗ったり、シンクを掃除したりする姿でさえも。
彼女はいつでも一生懸命で、ホントに可愛い。
時にはイタズラ心が湧き起こって、後ろからぎゅっと抱きしめて、その作業を中断させてしまうことがある。その度につくしは真っ赤になって、「邪魔したらダメ!」って俺を諭すんだ。

いい加減、こうした触れ合いに慣れてくれてもいいのに。
夜になったら、これよりもっと親密なコトだっていっぱいしてるのにね。


でも、何をしているのか分からない行動が一つある。
つくしは時々、包装のビニルラベルや箱にハサミを入れて、そこから一部を切り取っている。1~2センチ四方の正方形のそれを、たくさん小瓶に集めているみたい。
あれには何の意味があるんだろう…。


「えぇっ? 類、ベ■マークを知らないの?」
ある日も、つくしがお菓子の包装箱からチョキチョキと紙片を切り取っているのを見て、俺は訊ねた。すると、心底ビックリしたような反応が返ってきたのだ。
…このマークに固有名称があるわけ?
確かに、切り取った紙片にはどれにも共通のベルの絵がついている。よく見れば、何やら点数やメーカー名が書いてあるようだ。
「…知らない」
「う~~~ん。…よく考えてみたら、確かに類は無縁だったかもね」
言って、つくしはスマートフォンで検索を始めた。
俺のと同じデザインで色違いのそれは、俺がプレゼントしたものだ。
「要はボランティア活動なの。社会勉強の一つと思って、まずはコレ読んで?」
ニッコリ笑顔とともに、はい、と差し出された画面には、その名を冠する財団のホームページが映し出されていた。


財団の理念と活動の流れはすぐに理解できた。
対象となる商品には、その値段に応じた点数がマークに付与されている。それを集めて財団に送ることで、協賛会社から点数相当の資金をもらい受けることができる。それはマークを送ってきた学校などの施設に、資金に応じた設備品購入を可能にする。そうした形で教育助成を行うというものだ。
さらには設備品の購入金額の一部が財団に寄付され、その他の教育の充実・拡充を図るために使用される、といったものだった。

「…へぇ。そんなシステムがあるなんて知らなかった」
「1点が1円っていう世界だもん。英徳ではあり得ないよね。手っ取り早く寄付しちゃうだろうし」
「そうだね」
「あたしの小学校には、ベ■マーク委員会っていうのがあってね。積極的に点数を集めようってクラスに呼び掛けたり、放課後に委員達で集まってマークの点数を合計したりしたんだよ。学校全体で日本一を目指したりしてさ」
「…もしかして、つくし、その委員だった?」
「あはっ、分かる? あたし、計算は早かったからすごく重宝がられたんだよ」
小学生のつくしが、たくさんの小さなマークを前に奮闘している姿を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれた。

「今、集めてる分はどうするの? 会社に持ってくわけじゃないんでしょ?」
学校が主体のボランティア活動なら、すでに社会人である彼女はもう無関係だと思うんだけど…。
「習い性っていうかね。マークがついてる商品はだいたい覚えてるし、今でもつい集めちゃうの。集めた分は、従姉のうちの小学生の子にあげてるよ」
「…じゃ、本当にボランティアだね?」
「そそ。母校のためでもないしね。…でも、そうやって子供達の役に立てるなら、捨てちゃうよりいいじゃない? マークたくさんあげると、すごく喜ばれるし」
つくしはそう言って、ふふっと笑った


小瓶にはかなりの数のマークが集めてある。
それらを全部足し合わせたってほんの何百円にしかならないのかもしれないけど、小さな切片に託された善意を思うと、目の前の彼女が無性に愛しいような気がした。
その気持ちに任せて彼女を熱くハグすると、つくしはまた抵抗を示したけどね。




*******************




ある日、類が何枚かのラフ画を持ってきた。そこには、ロゴみたいなものがいっぱいデザインされている。
モチーフには花をあしらったものが多いかな? 
類はそれらをあたしの前に並べて、こう言った。
「あのさ、インスピレーションで、これがいいってデザインを3つ選んでくれない?」
「これ、何?」
「仕事で使う。…大丈夫。つくしだけに意見を求めてるわけじゃなくて、いろんな人に訊いてるから」
「そうなんだ。じゃ、気楽に選んでいいね」
あたしはざっとそれらを眺めて、デザインの候補を3つに絞った。
一つ目はガーベラ。二つ目は向日葵、そして三つ目は…チューリップ。

あたしがそれらを順に指さして示すと、類は笑った。
「つくしなら、チューリップのデザインを選んでくれる気がしたよ」
「そう?」
「だって、俺達の思い出の花だしね?」
「…うん」
類の目元が優しく和む。
あたしはその微笑みにそっと見惚れて、頬を染める。

NYで、彼があたしのために買ってくれた二本のチューリップ。
その花は彼を介したことで、あたしの中では特別な位置づけになった。

「協力ありがと。意見参考にするから」
類はさっさとラフ画をファイルに仕舞ってしまう。
…もう終わり?
「うん? お役に立てたのかどうか、よく分かんないんだけど…」
「十分だよ。…で、これから何を作ってくれるの?」
「あっ、今夜はねぇ…」
そうして類が話題を変えてしまったので、この短時間のやりとりは頭の隅に追いやられてしまった。その後も類はデザインについての続報をくれなかったし、あたしも毎日が忙しくて、そのことはすっかり忘れてしまっていた。


…だけど。


2ヶ月くらいして、あたしはふと見覚えのある花のデザインを、購入した商品の包装に見つけて仰天した。

―このチューリップのデザイン。これって……!!

…何がビックリって。
花をあしらわれたロゴは、例のベ■マークの正方形の枠内に描かれていたのだ。それにあたしの記憶では、この商品はマークのついた対象商品ではなかったはずだ。
慌ててスマートフォンで財団のホームページを確認すると、新規の協賛会社の中に“花沢物産”が名を連ねているのを見つける。


―類ッ!
―どういうことよ―ッ!!



「…気づいた?」
その夜、類をアパートに呼び寄せ、彼を畳の上に正座させて問い詰めると、しれっとした顔で彼はそう言った。
「“気づいた?”じゃないよ。…何よ、コレは」
「広報活動の一環」
「へっ?」
「だって、課題だったから。客層を広げるにはどうするかっていう。財団の活動に参加することで、全国のPTAや、これからの世代の子供達に、うちの会社の名前の周知を図ろうと思ったんだけど?」
と、ニッコリ顔。

―なんか、もっともらしいことを言ってるけど…。

「…このデザインは? まさか職権を濫用したんじゃ…?」
パッケージのマークを突きつけて問えば、
「ちゃんと会議にかけて、公正に選定してもらったよ?」
と、またニッコリ顔。

―公正? 本当に?

あたしが疑わしそうにすごいジト目で彼を見るので、類は笑いをこらえきれないという感じになり、ついには吹き出した。
「あっはっは…。この日を待った甲斐があったよ。…つくしがいつ気付いてくれるのかって、ずぅ―っと楽しみにしてた」
心底楽しそうに腹を抱えて笑いながら、類は言う。
「思った通りの反応だった♪」
「あっ、あのねぇ!」
あたしが思わず声を大きくすると、類はその美しく澄んだ瞳であたしを見上げてこう言った。

「…オリジナルだよ」
「え?」
「二人で決めたデザインのマークがたくさん集められて、ゆくゆくは子供達の教育のために活かされるなんて、素敵なことだと思わない?」
「…はっ!? 二人で決めたデザイン?」

―他の人の意見も聞くって言ってなかったっけ?

「一つ嘘をついたのは、デザインに関する意見を求めたのは、つくしだけだったってとこかな?」
「る、る、類っ!」
「まぁまぁ。可愛いマークになったろ?」

―このっ、確信犯めっ!
―私情挟んでるしっ!
―そんな甘えた目をしてもダメなんだからっ!


二人のオリジナル・マークだと言われて、不覚にも嬉しく思ってしまった気持ちと。
やっぱりこれは職権濫用だと、彼を滾々こんこんと説教してやりたい気持ちと。
相反する気持ちで頭がゴチャゴチャする。

もう正座崩していい?と上目遣いに問われ、知らない!と冷たく返して背を向けてやったら、甘えモードにスイッチが入ったらしく、類はベタベタとあたしに纏わりつくようになった。
「どうして、そんなに怒ってるの?」
「社会にも会社にも貢献もできて、一挙両得じゃない?」
最後には、おんぶお化けよろしく、あたしの頭に顎を乗せて後ろからぴったりとくっついてくる始末で。


シュンと項垂れたスタイルが、反省しているように見せかけてるだけなんだって、付き合いの長いあたしには分かってるよ。
悲し気に見せている瞳の奥が、本当は笑ってるんだってこともね。
だけど……。
真正面からぎゅうっと強く抱きしめられた後、目線の高さを合わせて瞳を覗き込まれてしまえば、あたしは類を許さずにはいられないんだ。
それを分かってやっている類が、どうにも小面こづら憎い……。


「…もう、騙し討ちはやめてね」
「分かった」
類は言う。
「ちゃんとオープンにすればOKってことだよね?」
「…意味合いが少し違う。オープンでも、仕事に私情を持ち込んじゃダメってことだよ!」
ちぇ、と笑う彼。
…まだ何か企んでいたわけ?



その一件以降も、あたしはせっせとマークをため込んでいる。
こっそりだけど、買い物では例のチューリップ・マークがついた商品を、可能な限りで選ぶようにして。


…そのうちの1枚を愛用の手帳に貼っていることは、類には! 絶対に! 内緒!



~Fin~





いかがでしたか?
書き上げてみたら、糖度低めの異色なSSになってしまった気が…💦 登録商標の問題などがあると思ったので伏せ字ですが、みなさんお分かりですよね?

我が家には小学生の子供がいるので、一緒にせっせと集めています。彼らの方がマークのある商品をよく覚えているんですよね。“マークはこの後どうなるの?”というやり取りから生まれたのがこの作品でした。
楽しみながら書きました。どうぞご笑納くださいませ(*ノωノ)



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