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23.対面

Category『Distance from you』 本編
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「先生! もしかして、またですか?」
次の日の朝、出勤した由紀乃が、昨晩まではいなかった2匹の仔猫に気付いて声を上げる。つくしはちょうど哺乳中だった。
「昨日、由紀乃さんが帰った後で、通路に置きに来た人がいるみたいで…」
由紀乃は憤懣やる方ないという様子ながらも、もう一匹の哺乳を手伝ってくれる。
「こんなに可愛いのに、捨てるなんて…」
「…だからこそ、助けてくれそうなココなんでしょうね」

哺乳が済むと、つくしはお湯に浸した濡れガーゼで仔猫の股をちょんちょんと拭って刺激した。本来なら母猫の仕事であるそれは、濡れた感触を与えることで仔猫に排尿や排便を促す。2匹は小さく震えながらそれらを済ませた。便の状態も悪くなく、2匹の健康状態は問題ないようだ。
「由紀乃さん、写真撮ってくれますか? ホームページで飼い主を募りましょう」
「前回はすぐ決まりましたけど、今回はどうですかねぇ」
由紀乃はスマートフォンで写真を撮って、すぐパソコンにデータを送ってくれる。つくしはひかわ動物病院のホームページを編集して、お知らせに『飼い主募集』の記事をUPした。



「つくし! 久しぶり!」
優紀は約束の時間より少し早く顔を出してくれ、つくしはホッと安堵の表情を浮かべた。
「よかった。本当に来てくれて」
「ん? さては信用してなかったな?」
「だって麻帆ちゃんの体調もあるじゃない。あ、寝てる。可愛いねぇ…」
当の麻帆は、優紀の胸に抱っこ紐で抱かれ、愛らしい寝顔で眠っている。しばらく見ないうちに、ずいぶん顔立ちがしっかりしてきた。目元が親友によく似ている。
「あの人、まだ来る時間じゃないの。寒いから早く上がって?」
「うん。2階に上がるの、何年ぶりだろう」
2人は笑って話しながら、上階へ移動した。

寒さが厳しくなってきたので、居間には炬燵をセットしていた。麻帆が寝転がるための毛布も準備済みだ。抱っこ紐ごと麻帆を横にしても、彼女はまだスヤスヤと眠っている。ふっくらした頬やきゅっと丸められた手につくしが触れても、麻帆は身じろぎひとつしない。
「前と内装変わった?」
優紀の問いに、つくしは頷く。
「おばあちゃんがここを出る時に、私が住みやすいように改装していいよって言うから、少しだけいじってる」
「カイ達は3階よね。あとで会いに行ってもいい?」
「うん」

優紀はカイとファイのことを覚えている。学生の頃は何度もここに泊まりにきたことがあり、カイの散歩にも一緒に行ったことがある。
「カイ、だいぶ弱っててね。年は越せないかもしれないの」
「そうなんだ…。すごく長生きしてるもんね」
「あの子が居なくなるなんて、しばらく立ち直れないよ…」
つくしは、今までもたくさんの愛犬・愛猫を、祖父母とともに見送ってきた。
カイと過ごした時間は一番長く、12年間にも及ぶ。それだけ、つくしとも深い絆を結んでいる。
肩を落としたつくしに、優紀はそっと触れて優しく励ました。


午後1時半になる少し前、類が病院を訪ねてきた。
昼休みの番をしているミチ子に誘導されて、彼は2階へと上がってくる。
優紀の姿を認めると、類はとても美しい所作で挨拶をした。
流れるようなその動きに、何をしても様になるな、とつくしは冷静に見つめる。
「初めまして。花沢類と申します」
優紀は類の姿を見るなり、ぽっと頬を染めた。モデルと見紛うほど整った顔立ちの相手ににわかに緊張し始めた様子だ。
「は…初めまして。立花優紀です。こちらは娘の麻帆です。つくしとは中学の頃からの親友で…」

それから優紀と二言三言交わした後で、類はつくしに向き直り、持参した紙袋をすっと差し出した。
「はい。二人分あるから」
「…いつもありがとう。気を遣わなくても良かったのに」
すると返答とともに、満面の笑みが添えられる。
「違うよ。ただ、そうしてあげたいって思ったからだよ」
「………………」

―何だろう。いつもの3割増しのようなこの笑顔。
―無駄にキラキラを振り撒かないでほしいんだけど…。

ひゃっ、と傍らの優紀から変な声が洩れ聞こえて、つくしは内心舌打ちしたい気持ちでいっぱいだった。

―まだまだよ、優紀。
―この人にとって、これはジャブ攻撃に過ぎないんだから。


照れるでもなく、礼を言って紙袋を受け取ったつくしだったが、類はまるで気にしたふうがなかった。
箱は2つ。つくし用と、優紀用と。
中身は、某有名店のロールケーキのようだ。





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いつも拍手をありがとうございます。さて、三者面談の始まりです。

カウンターが60,000近くになりました。今夜~明日で超えるものと思われます。
ご訪問ありがとうございます<(_ _)>
更新日の関係で、明日の定時に6万HIT記念SSをお送りしようと思います! 性懲りもなく、また書いてみました…💦 お楽しみいただければ幸いです。
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2 Comments

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2018/12/18 (Tue) 18:44 | REPLY |   
nainai

nainai  

m様

こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
なんとか定期更新を頑張っております('ω')ノ

類と1対1で話をするのに気後れしたつくしは、親友の優紀を呼びました。優紀は見かけふんわり、芯はしっかりの女性で描いていますので、これからの三者の掛け合いを楽しんでもらえたらと思います。
カイの死はいずれ訪れるものとして、すでにこの先の物語に組み込んでいます。その頃の二人の関係は……まだ内緒です。どうぞお楽しみに。

今年も残りわずかですね。何かと忙しい時期ですが、m様もご自愛くださいませ。
今夜は記念SSをUPします。そちらもご覧いただければ嬉しいです。

2018/12/18 (Tue) 21:04 | REPLY |   

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