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24.質疑応答

Category『Distance from you』 本編
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麻帆がまだ眠っているので、優紀がその傍にいられるようにと、3人は炬燵で手足を温めながら話を始めることにした。
類の向かい側にはつくしが座り、二人の間に優紀が陣取った。
優紀は類に質問をし、類は丁寧にそれに応じた。

花沢物産代表取締役社長を父に持ち、自身も副社長の任に就いていること。
2歳で実母と生き別れ、今は父と継母と異母弟が家族であること。
都内に本宅があるものの、現在は一人暮らしであること。
25歳で見合いをし、婚約までしたが、類側の事情により成婚には至らなかったこと…等。


「…つくしには、ちょっと失礼な言い方になるけど、訊いてみてもいい?」
「任せる」
優紀の前振りに、つくしは頷く。
「人の容姿について言える筋合いはない自分ですが、つくしの顔もスタイルも、言わば十人並みだと思うんです。1年のうち360日はジーンズですし、根っからの仕事人間ですし。…花沢さんの周囲でしたら、もっと美しく洗練された女性が多いと思うんですけど、どうしてつくしがいいんですか?」

このストレートな物言い。
だから、私は優紀が好きだ。

「概ね立花さんの仰る通りですが、違う部分もあると思います」
類は生真面目な顔で答える。
「飾らない先生も俺には十分魅力的なんですが、手をかければ五人並みにはなると思います」
「………えっと」
「………………」
優紀は言葉に詰まってつくしの顔を見つめたし、つくしは類の挙げた具体的な数字に思わず苦笑した。

―五人並み、ね。…って、言葉遊びじゃないんだからさ。

「彼女と一緒にいるとリラックスできます。素の自分を出せるので。…周囲はどうしてもバックグラウンドや肩書に重点を置きがちなので、こっちも構えざるを得ないんですが、先生にはそれがありませんから」
類のその返答に、優紀は意外にも冷静だった。
「…自分の周囲につくしのようなタイプがいないから、毛色が違って珍しく感じているだけじゃないですか? ちょっと付き合ってみたい、という程度の軽い気持ちでしたら困ります」
つくしは、優紀のその言葉に拍手を送りたい気持ちだった。第三者の目から見ても、自分と同じことを疑問に思うのだと知り、ホッとした部分もある。



「軽い気持ちではありません。長く付き合っていきたいと思っています」
「それって…」
「えぇ。結婚前提のつもりです」
優紀が再びつくしに視線を送る。
つくしは動じたふうもなく無表情のままだ。
「…あの、でも、花沢さんのご家族は反対されるんじゃないですか? つくしは一般家庭の出ですし、自分の仕事を最優先にします。きっと、ご家族の望むような奥さんにはなれないと思いますよ?」
「構いません。ただこれからの人生を一緒に歩んでくれたら、それだけで。仕事も続けてもらって構いません。…父は反対するでしょうが、もう彼の意向で人生を左右されたくはないですから」


「……そんな、甘くないんじゃない?」
つくしが口を挟む。
思わず飛び出した言葉は、自分で思うよりずっと冷たい声音になった。
「あなたのお父さんは、絶対に納得されないと思う。…あなたは、そういう家柄の人でしょう?」
「…まぁ、そこについては俺に考えがあるから」
「考えって?」
「今はまだ内緒。そのうちに明かすね」
小さく笑んだ類の表情はとても蠱惑的だ。

―ああ言えば、こう言う…。
つくしはため息をつく。
類の持論を打ち崩すのには本当に骨が折れそうだ。

それからも優紀はいくつか質問を繰り出すが、類の返答は淀みなく、ブレがない。彼女の援護射撃も、類にはまるで効いていない気がした。余裕のある微笑で、質問のすべてを往なされてしまう。


「……私は、いつか、過去を克服できると思う?」
もう午後の診療までに時間がない。
つくしは最後の質問とばかりに、半ば投げやりに類に問いかけた。
「あなたのこと、この先もずっと、受け入れてあげられないかもしれないんだよ。…それがはっきりしたとき、時間の無駄だって思うんじゃないの?」
つくしはうつむき、優紀は困ったように二人を交互に見つめた。
「…先生のトラウマは10年になるよね」
「そうね」
「俺、15年待ったんだ。16歳で失恋して先生に出会うまでずっと、自分はもう誰かを好きになることはないだろうって思ってた。…やっと好きな人に出会えたんだから、1年や2年なんて軽く待てる」

優紀の口がぽっかりと開く。驚きのあまりに。
つくしは顔を上げ、類を見つめる。それにね、と前置きして類は笑った。
「先生のトラウマについては、たぶん、信頼関係を結ぶことが一番の解決策になると思う。要は、俺があんたを傷つける存在じゃないって、ちゃんと分かってもらえればいいんだ。だから傍にいたい。俺という人間をもっと知ってほしい。…そのために時間が必要だっていうのなら、いくらでも待つつもり」


―つくし、諦めなよ。
優紀はしみじみと思った。
―この人、生半可な気持ちじゃない。
―本当につくしのことが好きなんだよ…。

優紀は、硬く強張ったままの親友の横顔をじっと見つめる。
以前の彼女は、こんなクールな性格じゃなかった。喜怒哀楽がはっきりしていて、見ているこちらを元気にしてくれるような笑顔が持ち味だった。それに照れ屋な一面もあった。
かつてのつくしの笑顔がもう一度見られるのなら…と、優紀は切なく昔を思った。



「…分かった。あなたと向き合ってみようと思う」
ややあって返されたつくしの回答に、類も、優紀も驚いた表情になる。
「いいの?」
「本当に?」
二人の声が重なる。つくしは硬い表情のまま頷く。
「ただ、優紀も言ったように、あなたのために特別にしてあげられることはほとんどないよ。私は仕事を優先するし、向き合うと言ってもこれまでの関係と変わらないと思う。やっぱり無理だと判断したら、断る可能性もある。……それでもいい?」
「構わない。…すごく嬉しい」

類は微笑む。その喜びがダイレクトに伝わるほど、目元が優しく和んだ。
つくしはぐっと胸を突かれた。
その笑顔があまりに純粋で、あまりに眩しくて。


つくしは、初めて願うに至った。
その笑顔を信じてみたい。
彼の本心が嘘偽りのないものであってほしい、と。





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明日は記念SSの後編をお送りします。本編の続きは明後日です。
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2 Comments

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2018/12/20 (Thu) 16:56 | REPLY |   
nainai

nainai  

m様

こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
共感していただけて嬉しいです(*'▽')

さて、やっと類との交際に前向きな姿勢を見せたつくしです。…観念したという言葉が合いそうな状況でもありますが(;^_^A 優紀は優紀で、つくしに昔の笑顔を取り戻させてほしいという想いを、そっと類に託しました。

今作の類は、とにかくつくし一筋なのでとても描きやすいです。つくしはまだまだクールなままですが、だんだんと変化していきます。今後の展開をお楽しみに…。

2018/12/20 (Thu) 21:17 | REPLY |   

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