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Best partner ~前編~

Category6万HIT記念
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日頃より当サイトにご訪問いただき、誠にありがとうございます♪

おかげさまで、この度6万HITを記録いたしました! 
地道に記録を伸ばしております。今後ともよろしくお願いいたします<(_ _)>

いつもたくさんの拍手や温かいコメントをありがとうございます。
日々、励まされ、“頑張って書くぞ~”と創作意欲を燃やしております。
目下の敵は睡魔ですかね…。体が温まるとすぐ眠くなっていけません💦

遅筆故、連載の時間経過は遅々としておりますが、頭に描いている世界観を大事に、物語を綴っていけたらと思います。今回も長期化の予感がヒシヒシですが、必ずエンドまで繋ぎますので、よろしくお付き合いくださいませ。


6万HIT記念として今回もSSを書きましたが、6000字を超えたので前後編に分けることにしました。都合上、連載日を挟んでUPします。SSは細かい設定を抜きに、独立したひとつのお話として書いています。お気を楽にお読みいただければと思います。

それでは、まず前編をどうぞ~。




『Best partner』



いつから始まったことだったのか、正確には憶えていない。
類のくれるたくさんの優しさの中に、それは紛れてしまっていたから。
だけど、彼の行動の隠された意図に気付いたとき、あたしは胸を打たれずにはいられなかったんだよ。



「あれ? 類、今日は歩かないの?」
大学の講義が終わると、類はあたしをバイト先まで送ってくれる。もちろん都合が合うときだけね。それぞれ多忙に過ごすあたし達ができるだけ一緒にいられるように、徒歩15分程の距離を話しながら歩くのが常だった。

彼と一緒に見る街の風景が好き。
道沿いの樹木や草花、立ち並ぶ店の外装、すれ違う人々を見ながら、季節の移ろいを感じたり、時の流れを感じたりして。

暦は12月に入った。
類は、冬の季節が好きだ。寒いのが平気なのは、高校時代に冬でも非常階段で眠る彼を見て知っていた。冷え性なあたしには、それがちょっと羨ましい。
天気の良くない日ではあったけど、今日もいつものように歩いていくものだと思っていたんだけど…。

「車で送るよ。昨日より寒いしね」
「分かった。いつもありがとう」
…でも、そうしたら、あっという間にバイト先に着いちゃうよね。
なんて少し残念に思っていると、その考えを読んだかのように彼は微笑む。
「その代わり、“15分間”のドライブにはするよ?」
「あっ、そ、そういう事…」
それだと一緒にいられる時間はいつもと変わらない。
下降気味だった気分は、あっという間に上向きに。

…あたしって、単純だな。
…類の言葉だけで、これだけ一喜一憂できちゃうんだもんね。

「でも、そこが牧野の可愛いところだと思うよ」
横から飛び出した類のその台詞に、あたしははたと我に返る。
「…また声に出してた?」
「うん。…さ、行こ?」
なかなか直らない悪癖に照れ笑うあたしに、類は手を差し出す。
あたしも手を差し出し、冷たくなった互いの指先を絡め合わせた。



周囲へは交際宣言をしている。だから大学構内で手を繋ぐことも、変に隠し立てしないでオープンにしてきた。最初は恥ずかしくて仕方なかったし、女生徒達からはひどくやっかまれもしたんだけど、堂々とした態度で続けるうちに、次第に容認されるようになったみたいだった。
類曰く、“継続は力なり”。
…言い得ているような、微妙に合っていないような。

グッドタイミングで迎えに来てくれた花沢家の車に乗り込むと、あたし達は手を繋いだまま自然に体を寄せ合う。あたしが類の肩に頭を乗せると、そこに類が頭を乗せてくる。頭と頭をくっつき合わせる、そんな感じに。
無言のままでも、類との時間は特別。
どんな疲れもゆるりと癒されて、“さぁ、頑張ろう”って思えるんだ。



実を言えば、今日はあまり体調がよくなかった。
昨日からの軽い倦怠感。朝からの頭痛と下腹部の鈍痛。
特徴的な前兆に、あぁ、今月もその日が来たんだなと理解した。
女性ならではの周期的な不調については、どちらかと言えばあたしは症状が重い方で、いつも憂鬱な気持ちになってしまう。

類とは、デートの度にというわけではないけれど、それなりに深い関係もある。いつまでも物慣れないあたしに、彼の方が歩調を合わせてくれて。
それでいて類は甘え上手だから、彼にリードされているのに、彼を守ってあげているような不思議な錯覚に陥ってしまうんだ。
…幸せだなぁって、つくづく思う。言葉では言い表せないほどにね。

でも、あたしが不調の時は応えてあげられないし、わざわざ彼に不調を伝えるのも憚られるから、可能であればその期間は会うのを控えるようにしていた。
その方がお互いに気を遣わなくていい、と思っていたからなんだけど…。


「明後日のことなんだけどさ」
「…うん」
あたしは少し微睡みながら返事をする。この時期はやたらに眠い。
明後日の体調を考え、行けるかどうかを考えあぐねる。
「車で遠出するつもりだったけど、やめにして美術館に行かない? ある個展が盛況なんだって」
唐突な類の提案に、あたしはぼぅっとしていた意識を覚醒させた。
…久しぶりに愛車で出かけたい、と言ったのは類だったのに。

「どうして? ドライブ、行きたがってたじゃない?」
頭をくっつけ合ったままあたしが問うと、類が笑ったのが触れ合う部分の動きで分かった。
「ん~。今週は疲れることが多かったし、近場でのんびりしたいなって。…どう?」
「もちろんいいよ。でも、すごく疲れてるなら、無理に出かけなくても…」
と、あたしが言えば、繋いだ手をきゅっと握られる。
その先に続く言葉を封じるように。
「牧野と会えないのはヤダ」
「…うん。分かった」
もともと類には気まぐれなところがあったから、そのときはそうした希望の変更もよくあることだと深くは考えなかった。

類の挙げたアル・シュトーというフランス人画家の名を、あたしは知らなかった。でも、きっと目にしたことのある作品も多いはずだよ、と類は微笑む。
そうこうする間に15分間のドライブを終えて目的地に着き、あたし達はライトなキスをして別れの挨拶をした。
「またね」
「うん。送ってくれてありがと」




週末の美術館デートはとても楽しかった。
個展は前評判の通りに盛況で、入場には整理券が配られたほど。
“貸切ってもよかったね”と、あながち冗談にも聞こえない一言をさらりと発されて苦笑しながら、あたし達は人波に乗って順路通りに館内を巡った。

アル・シュトーは、自分の家族への深い愛情をありのままにカンヴァスに描いた画家だ。色彩は暖色系が多く、人々や物の輪郭線が柔らかでほのぼのとした印象を抱かせる。鑑賞の際、類が丁寧な解説もつけてくれるので、あたしはすっかりシュトーのファンになってしまった。売店にはポストカードがバラ売りされていて、あたしはたくさんの作品のうち、特に気に入った2枚を購入した。

体調は相変わらず良くはなかった。けれど、彼と過ごす時間はやっぱり特別で、来てよかったと思えた。美術館近くのカフェで温かい飲み物を頼んで、のんびりと休憩した後、類はあたしを自宅アパートまで送ってくれた。

帰りの車中で強い睡魔に襲われたあたしは、気づけば類に膝枕されていた。体には類のコートをかけてもらっている。慌てて身を起こそうとするのを制し、柔らかな手つきで頭や背を撫でながら、類は優しくあたしを労わってくれた。「ずいぶんお疲れモードだね」と。
本当は疲れというより、不調からくる眠気や倦怠感なんだけれど、彼にそういうふうに甘やかされるのが嬉しかったし、そのことは敢えて明かすことでもないからと黙っておいた。



「それ、綺麗な絵だね」
殺風景な部屋だけど、ちょっとでも心の潤いを…と思い、購入したポストカードの1枚をカード立てに差し込んでいると、進が寄ってきて感想を言う。
「アル・シュトーっていう画家の展覧会に行ってきたの。進、知ってる?」
購入したもう1枚を見せてやると、進は感心しきりに言う。
「へぇぇ。これもいいね。…類さんと付き合うようになってから、ねぇちゃんも教養の幅が広がったよね」
「もともとが無知だからねぇ…。類の博識ぶりにはホント舌を巻くよ」
そう言って笑い合っていると、ふと思い出したように進が言った。

「あれ? でも、今日はドライブじゃなかった?」
「そうだったんだけど、類が予定を変更したの」
それに対し、進は笑いながらこう言った。
「類さんって割と気まぐれだね」
「…え?」
「ちょっと前にもこういうことあったじゃん」
あたしが要領を得ないので、進は「ほら、あれだよ」と懸命に記憶を辿ってくれる。
「いつだっけ? ドライブの目的地が急に変更になったよね。“軽井沢土産が葉山土産になった~”って言ってさ」


…そうだった。あれは、夏の終わりの出来事で。
その日も二人で遠出しようと話していて、目的地は花沢家の別荘のある軽井沢に決めていた。だけど当日になって、葉山の方の別荘に行こうと類が言い出し、あたしはちょっと不思議に思いながらも提案に同意した。
軽井沢では市内を歩いて観光するつもりでいたけれど、葉山の別荘ではのんびりとランチを楽しんだり、森林浴を満喫したりして、ゆったりとした穏やかな時間を過ごしたんだった。

…あれ? ちょっと待って。
…確かあのときも、体調がよくなくて…。

そのときの詳細なエピソードを思い出していく内に、あたしはあることに気付いた。きちんとした確証を得たくてスケジュール帳を開く。
改めて振り返ってみれば、あれもこれも…といった感じにいろいろな事がカチリと組み合わさり、一つの結論へと集約されていく。
あたしの疑念は確信に変わった。


…もしかして、そういうことだったの?





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いつも拍手をありがとうございます。
作中の“アル・シュトー”という画家は実在しません。絵画へは各々の抱くイメージを大事にしたいので、敢えて実在の画家を挙げませんでした。悪しからず…(;^_^A
後編の更新は12/20です。お楽しみに。
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2 Comments

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2018/12/19 (Wed) 20:10 | REPLY |   
nainai

nainai  

m様

こんばんは。
今夜もコメントありがとうございます。嬉しいです(^^♪
記念SSの公開は、皆さんの反応がどうだろう~と毎回緊張しています。

進のコメントによって、つくしは気づかされるんですね。
類の行動には意図が隠されていたんじゃないか…と。
前半では、類の膝枕が一番書きたかった部分でしたw

SSには一応テーマを設けているので、後編でその辺りを読み取ってくだされば、と思います。明日も定時にUPします。よろしくお願いします。

2018/12/19 (Wed) 22:45 | REPLY |   

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