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Indigo in ice ~1~

Category7万HIT記念
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日頃より当サイトにご訪問いただき、誠にありがとうございます♪

おかげさまで、この度7万HITを記録いたしました!
有難いことだなぁと感謝しきりです。これからも遅筆ながら更新を頑張っていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

記念SSがなんとか出来上がりましたので、連載の更新日の合間にUPします。
前・中・後編で纏めるつもりが全6話になってしまい、SSとは呼べないのですが💦 
なかなか思うように書き終えられず、10日間ほど苦しんでおりました。

SSは、毎回書きたいワードを基に、想像を大きくふくらませて書いております。今回もテレビで観た、とある一場面からお話が浮かびました。
連載とは一味違う、二人の物語を楽しんでいただけましたら幸いです。






『Indigo in ice』




『おはよう。体調はどう? 今夜も来れる?』
真さんからのメールに、あたしは急いで返信をする。
『大丈夫です! 何時に行けばいいですか?』
『アパートまで車で迎えに行くよ。22時でどう?』
『ありがとうございます。準備して待ってます。』

短時間でやり取りを終えて顔を上げると、自分を見つめる薄茶の瞳と視線がかち合う。相手は少し不機嫌そうだ。
「…誰から?」
類の問いに、あたしは微笑を返した。
「中学の時の先輩。こないだ偶然再会して、連絡先を交換したの」
「ふぅん…」


再会は数年ぶりだった。バイト帰り、バス停でぼーっと立っていたら、ポンポンッと肩を叩かれた。真さんの方は取引先からの帰りだったようだ。
中学の時よりも背が高くなって、手足もすらりと伸びてモデルみたいで。
真さんは本当にカッコ良くなっていた。
明るく染めた短い髪と中性的な顔立ちは、どこか類を連想させる。

うちに来ない?と誘われて、そのまま真さんの車に乗った。
思い出話に花が咲き、二十歳を祝われてお酒もちょっとだけ楽しんで…。
気付いたら、真さんのベッドで一緒に眠っていた。
もうビックリやら、恥ずかしいやら。
でも、すごく楽しい夜で…。
再会した日を含め、真さんと会うのは今夜で3回目になる。


「これから出かけない? バイト、休みになったんだよね」
家庭教師先の生徒さんが、体調不良のためにお休みしたいと連絡をくれたのは真さんのメールが来る少し前だった。
類の誘いには心揺れるけれど、今は真さんとの約束が優先だ。
「あ…っと、ごめん。今日はちょっと…」
「…何で?」
類の顔がますます不満そうに曇る。
「講義でレポートが出されたの。提出期限が近いから、すぐ取りかかりたいんだ」

申し訳なさを抱きながらも、あたしはそれを誤魔化すようににっこりと笑う。
類はあたしの顔をじっと凝視した後、つまらなさそうに溜息をひとつ吐いた。
…ごめんね。
あたしは心の中で類に謝った。



**************



―翌日。


「昨日は遅くまで出歩いてたんだな」
講義の合間の空き時間、ラウンジのソファで一人寛いでいると、総二郎の声が頭上から降ってきた。
「その様子だと、ずいぶんお楽しみだったんじゃね?」
揶揄うようなその口調に、俺はムッとして体を起こした。
「…いったい、何の話?」
「何って…お前と牧野の話だよ」

昨晩はいつものようにデートだったという総二郎。午後11時過ぎ、車道を挟んだ反対側の歩道で、背の高い誰かと一緒に歩く牧野を見かけたという。
場所は六本木界隈。

「てっきり類が一緒にいるものだと思ったんだが…」
「…俺じゃない。それに、牧野のはずがないよ」
昨日、牧野は早めに帰ってレポートをしていたはずだ。そんな遅くに、アパートから離れた街中を出歩いていることも考えられない。
だが、総二郎は譲らない。
「いーや、確かに牧野だった。…暗いし、遠目じゃあったがな」
事の真偽は、牧野に直接会って確認すれば分かる。
でも俺は、総二郎の話をあまり重く受け止めていなかった。それが彼女であるはずがない、と確信を抱いていたから。



牧野と付き合い始めて半年。
これ以上はないというくらい、俺達の仲は上手くいっていると思う。
喧嘩なんてしたことがないし、つい先日も牧野の誕生日を一緒に祝った。
とびきり甘くて、幸せな一夜だった。
二人で過ごしてきた日々が、俺に自信を与えてくれる。



牧野が選択している講義が行われた教室に出向き、彼女の姿を探す。でも見当たらなくて、近くにいた男に居所を聞いた。「牧野さんは早退したみたいです」とそいつは答えた。
電話をかけると、牧野本人ではなく、帰宅していた進が応答してくれた。牧野はひどく疲れているようで、まだ日も高いのに今はぐっすり眠っているという。
総二郎の話については、翌日以降に持ち越すことにして、俺は通話を終えた。

その夜、いくら待っても牧野から折り返しの連絡は来なかった。あのまま寝入ってしまったのだろうか、と思いながら俺も眠りについた。





―さらに翌日。


牧野から、今日は体調がよくないので大学を休む、とメールが送られてきた。見舞いに行きたい旨を告げるが、うつしてはいけないし、これから病院に行くからとやんわり断られる。
…総二郎から聞いた話は、メールではなんとなくできなかった。

誰もいないラウンジで一人、悶々としていたら、驚いたことに今度はあきらが牧野の目撃情報を持ち込んできた。ニヤニヤと笑いながら、あきらは俺を小突く。
「今朝、牧野と六本木の駅裏にいたろ。…朝帰りとはお安くないな」

なんで、また六本木?

俺の顔色が変わったのが分かったんだろう。
あきらはすぐに笑いを引っ込めて、複雑そうな表情になる。
「一緒にいたのは類じゃなかったのか?」


午前5時頃、朝帰りのあきらが車中から見かけたのは、俺ではない誰かと一緒にいる牧野。その時の服装を聞けば、彼女がいつも着ているコートと特徴が一致した。
不安と焦燥は膨れ上がって、俺は居ても立っても居られなくなった。
講義を受けていた総二郎をすぐ呼び出して、双方の目撃情報を共有し合う。総二郎が見た相手の特徴は、あきらが見た相手と一致したが、二人とも顔は見ていないという。


つまり、二人が見かけたのが本当に牧野だったら、彼女はその相手と二夜連続で一緒にいた。そういうことになるの…?


「…浮気じゃね?」
総二郎の第一声はそうだった。
「あの牧野がか? …んな、ありえねぇって」
俺を気遣ってか、あきらがすぐさま牧野を庇う。だが、あきらも相手を見ている。
ウロウロと動く瞳が、決して小さくはない動揺を表している。
「類はどう思ってんだよ」
総二郎は俺を見据える。
切れ長の目がひどく楽しげで、ムカッ腹が立ってくる。
「牧野を信じてる。絶対に、俺を裏切ったりしない」
「浮気されるヤツは、みんな同じこと言うんだぜ」
「…それでも信じてる」


俺に向けられる屈託のない笑顔。
言葉や仕草に混じる、彼女らしい控えめな愛情表現。
誰よりも、何よりも、大切な彼女。
牧野と俺の間にあるものが愛じゃないなら、そんなものはこの世に存在しない。
そう思えるほどに牧野を信じてる。


「…よーし。確かめてやろうぜ」
総二郎の言葉に、あきらが問う。
「どうやって?」
「美作の端末借りたら、牧野の携帯で簡単に居場所を探れるだろ」
「…うちのマザーを借りる前提かよ」
この中にあって、比較的に常識人のあきらは良心が咎めるのだろう。
「これから、牧野に電話する。…応じてくれなかったら、追跡する」
俺がそう言うと、そうこなくちゃ、と総二郎が指を鳴らした。
あきらは難色を示していたが、最後には同意してくれた。


かくして、牧野は電話に出なかった。
俺達の意志は固まった。



**************



「…牧野、さっき電話鳴ってたかも」
「えっ?」
真さんの言葉に、あたしは鞄の中の携帯電話を探った。
マナーモードにしていて気づかなかったけれど、類からの着信が2件。
留守電には、“気づいたらすぐ連絡して”とのメッセージ。
その声が暗く沈んでいたような気がして、あたしは妙な胸騒ぎを覚えた。

「うーん。…感づかれちゃったかもしれません」
「隠し事できない相手だね」
のんびりと声が返る。
「もうちょっとなのにな…」
あたしがため息まじりにそう言えば、
「楽しいことにも、苦しいことにも終わりはくる。…等しくね」
真さんはいつも冷静だ。
「続きをしよう。…で、今日は早めに帰った方がいい」
「はい。そうします」
あたしは頷いた。





いつも拍手をありがとうございます。
いったい何が起きているの?…の第1話でした。続きをお楽しみに。
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