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come to light ~前編~

Category9万HIT記念
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日頃より当サイトにご訪問いただき、誠にありがとうございます♪

おかげさまで、この度9万HITを迎えました!
時を同じくして、類もバースデーを迎えますね。Wでめでたいっ(*^-^*)

実のところHIT記念も類BDもスルーする予定でしたが、やっぱり何かしたいなぁと思い直し、ちょうどネタも浮かんだため恒例のSSを書きました。本当は、Illustration 第4弾にトライしたかったのですが、ちょっと時間がなさ過ぎてこちらは断念。
年度末は何かとバタバタしてしまいます。子供達が春休みですし、新年度の準備もありますしね。


『come to light』は前・中・後編の三部作で、8万HIT記念SS『forecast』の続きとなるお話です。まだ前作をお読みでない方は、ぜひそちらをご覧になってからお願いしますね。SSでは初めての続編となりました!

今回も連載の更新日の合間にUPします。
連載とは一味違う二人の世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
それでは、どうぞ。






『come to light』




皆は、結婚したことをどういう時に実感する?

二十歳の誕生日にプロポーズされ、年明けの2月2日に類と入籍したあたしが、最初にそれを実感したのは、区役所で戸籍謄本を発行してもらったときだった。
結婚して苗字が変わると、名義変更しなくちゃならないものがいろいろあるからね。
その手続きには結婚したことの証明書が必要なの。


夫の欄には、類の名前が。
妻の欄には、あたしの名前が…。


それを目にした瞬間、嬉しさが高じてふるふると身悶えてしまったあたしを、類がとても面白そうに眺めていた。…相変わらずクールなんだから。
戸籍は、夫婦が結婚したときから、親とは独立したひとつの『戸』として登録される。だから、この戸籍謄本には、今は類とあたしの二人だけが記載されている。
あたし達の間に子供が生まれたら、記載項目が増えていくんだ。

でも、それは紙面上のことだから、なんとなく現実味がなかった。
まだ結婚式も挙げていないしね。



結婚したことをより強く実感するのは、やっぱり新しい苗字で名前を呼ばれたときじゃないかな? 
20年間馴染んできた『牧野さん』が、新たに『花沢さん』になるんだもん。
類は改姓しないから、その部分での実感は湧きにくいものかもしれないけど。

花沢、牧野両家の話し合いの結果、あたしと類の学生結婚は、周囲の騒ぎを避けるために公表しないことになっている。
類の“彼女”であることと、“奥さん”であることは意味合いが違うからね。周囲からの接し方も色々と変わるだろうし、あたしも無駄な関わり合いは避けたかった。
公表はあたしの大学卒業のタイミングに、ということで話は決着している。


あたしは親友の優紀にだけ、結婚の事実を明かした。
優紀のビックリ顔、今思い出しても可愛かったなぁ。
おめでとうって何度もハグされて、結婚祝いに素敵なエプロンを贈ってもらった。
美味しい料理を作ってあげてね、って。
専属のシェフがいる花沢邸では、なかなか料理をする機会に恵まれないけど、たまには類のために何か作りたいなぁって思う。

反対に、類の方はというと、親友の3人にもその事実を伏せているらしかった。
大騒ぎされたり、やっかまれたり、からかわれたりするのが目に見えているから面倒なんだって。
でも、それ、ちょっと薄情な気がするんだけど。…心の友なんでしょ?
類が言わないから、当然あたしも言わないし、言えない。


あたし達は大きな秘密を共有し、そのくすぐったいような、甘酸っぱいような幸福感と優越感にどっぷりと浸りきった。
“バレるのはどちらからか”という話になると、類はあたしからバレてしまうことを、あたしも自分からそうなることを予想していて笑ってしまった。
まぁ、あたしがうっかり者なのは事実だからしょうがないか。

そういう経緯いきさつで、あたしが誰かから『花沢さん』って呼ばれる機会は全然なかった。
ただ、あたしは入籍した日から花沢邸で暮らすようになったし、住環境や生活リズムの変化によって結婚したことは実感できていたから、特に現状に対して不満を抱くようなことはなかった。



意外にも秘密はしっかりと保たれたまま、1年間が平穏無事に過ぎた。
3月下旬、類は大学を卒業し、あたしは春季休暇を謳歌していた。


そんなある日の朝のこと―。



「…痛っ」
左手首を動かすとズキッと走った痛みに、あたしは顔を顰めた。袖口をまくってみると、昨日ひねった部分が赤くなって腫れている。社交ダンスの練習をしているとき、ステップを誤ってよろけてしまい、床に手をついて痛めてしまったのだ。
すぐ冷やしたし、シップも貼ってもらったんだけどな。

「…やっぱり腫れてる。念のため病院で診てもらった方がいいね」
「そんな…大袈裟だよ。2~3日すればよくなるから」
あたしの抗議に類は首を振る。自分のことにはあれほど無頓着なのに、あたしのこととなると彼は超がつくほどの心配性になる。
「骨に異常があったら大変だから。俺も病院に付き添いたいけど、会社に行かなきゃならない。朝のうちに行ってきな」
「でも…」
「問答無用。…康江」
「はい。承知いたしました」
あたし付きの康江さんは、かつては類の教育係だった古参の使用人だ。あたしと類のやり取りを穏やかに見守っていたが、類に向けて恭しく礼をした。

どうやら今の類の目配せで、康江さんはお目付け役を命じられたらしい。
こうなってしまっては、最早あたしに分はない。
康江さんにとって類の指示は絶対命令なんだもの。
彼女はとてもいい人なんだけど、庶民っぽさが抜けきらないあたしのことが心配なようで、ありとあらゆる面でフォローをしてくれつつ、お小言も厳しく言う。

入社前から会社で働く類を玄関で見送ると、康江さんはニコニコしながらあたしを急かした。
「ささ、つくし様。ご準備なさいませ」
「…はい」
あたしは渋々ながら病院に向かう準備をした。



都内の某総合病院は、花沢家のかかりつけ病院だ。
レントゲン検査が終わると、医師は画像を見ながら丁寧に説明をしてくれた。
「骨に異常はありません。捻挫でしょう。ご必要であれば手首のサポーターをご用意しますが」
「よろしくお願いいたします」
あたしが返事するよりも前に、診察室まで付き添っていた康江さんが返事をしてしまう。医師の申し出を断ろうとするのを見越されていたに違いない。

結局は、康江さんも超がつく心配性なんだよね。
捻挫なら本当に2~3日で治っちゃうものよ?


待合室の椅子に座らされ、会計を済ませてくるという康江さんの戻りをぼんやり待っていると、思いがけないところから声がかかった。
病棟のエレベーターからエントランスに向かって、長いストライドで闊歩していた男が、こちらに目を留めて立ち止まる。
「…牧野?」
「あれ? 西門さん?」
「何してんだ。こんなとこで」
「西門さんこそどうしたの?」
黒のライダースジャケットがあまりに格好良くて、目立つことこの上ない。もう周囲がザワザワし始めてるし。

「親戚の見舞いだよ。ここの循環器科に、少し前から入院してんだ」
「そっか。…あたしはちょっと手首を怪我しちゃって」
あたしが包帯の巻かれた左手を示すと、西門さんはわずかに真顔になる。
「骨折でもしたか?」
「ううん。単なる捻挫。ダンスでよろけて転んじゃって」
「ははっ、鈍くせぇヤツ」
そう言って楽し気に笑う。
いやいや、笑い話じゃないっつーの。


西門さんに言われて、ふと考える。
ここは有名な総合病院。本来なら個人病院を受診し、その紹介状を持って受診すべき中核病院だ。花沢家のかかりつけだからここに直行したけれど、普通に考えると、この程度の怪我で受診ってどうかって話よね…。


「どうせ類が心配してここに寄越したんだろ? 実家の御贔屓だもんな」
一人でモヤモヤしていると、事情知ったる言葉が返って、あたしはホッとする。
「うん。そうなの。類が心配性でね…」
ボロが出る前に無難に説明して、早く話を切り上げよう。
そう思って口を開いた時だった。


「お待たせしました! 薬とサポーターを頂いて参りましたよ」
会話を遮るようにして、康江さんが慌ただしく戻ってきた。
「あっ、康江さん、あの…」
「奥様も心配なさっていましたから、先にご連絡しておきました。車はもう迎えに来ております。ささ、今日は寄り道せずに帰りましょうね」
引き留める間もなく、康江さんは一気にそうまくし立てた。
康江さんの位置からは、西門さんの姿が柱の陰になっていたんだろう。あたしも座ったままだったし、誰かと会話しているように見えなかったようだ。


あたしは彼女の発言に内心焦っていた。
だって、あたしと康江さんのやり取り、傍から聞けばちょっと変…よね?


「康江さん?」
西門さんの怪訝な声に、ここでようやく康江さんが彼の存在に気付いて……その表情が驚愕へと変わる。
「あっ、西門様…っ」
康江さんがアワアワしている。いや、あたしもアワアワしてるけど。
彼の疑問符だらけの表情に出くわす。
「なぁ、牧野。…お前、類のうちに住んでるのか?」


…うん。そう思うよね。
今、“帰ろう”って、康江さん言っちゃったものね…。
康江さんの態度も、お客様にというよりは、思いっきり身内に対する接し方だし。


「あの、その…」
「……3の……様~」
なんと言って誤魔化そうかと思ってたら、遠くから誰かを呼ぶ病院の受付スタッフの声が聞こえた。声はだんだんと近づいてくる。
「番号札503の花沢様ぁ~」

503って……あたしだっ!
このタイミングであたしを呼んでるの!? 
なっ、なんでっ!?

さらに冷や汗をかきながら、この状況を切り抜ける術を忙しく考えていると、スタッフの女性はあたしの顔を憶えていたのか、姿を捉えてこちらに小走りにやってきた。
あぁ、万事休す…。


「大変申し訳ございません、花沢様。新しい診察券のお渡しがまだでした」
深く頭を下げ、彼女は言う。
「あ…、ありがとうございます…」
謝罪とともに差し出された診察券を、あたしは顔を引きつらせながら受け取った。
すぐ横から、“は?”という驚きの声が上がる。
「お大事になさってくださいね。ご主人様にもよろしくお伝えください」
スタッフさんはもちろん類を知ってるんだろう。
でもって、ここで、しっかりトドメを刺してくれたんだよね…。


沈黙して固まったあたしの手の中から診察券を掠め取り、西門さんはそこに書かれた名を読み上げた。
「花沢つくし、ね。…って、いつの間に結婚してんだよ、おい」
「…あはは」
もう、乾いた笑いしか出ないよ。
「ちょっと茶でも飲もうや。…康江さん、牧野借りるな」
「…畏まりました」
ちょっと康江さんってば! ここは食い下がっていいところよ?
あたしは怪我をしていない方の右肘をがっちり掴まれ、そのまま西門さんに外へと連れ出された。


うぅっ。
『花沢さん』って呼んでもらえる貴重な機会だったのに…。


見上げれば、西門さんの満面の笑み。
それが綺麗を通り越して怖い。


類~っ!
説明しなかった類が悪いって言っちゃうからねっ!





『come to light』は、秘密がバレるという意味です。そのまんまですね(^^;
補足説明ですが、今作では原作分岐ポイントが非常に早い設定なので、つくしは桜子とも滋ともお友達になるチャンスがありませんでした。そのため、作中では秘密を明かす親友が優紀しかいません。
中編は明後日の更新です。どうぞお楽しみに!

いつも拍手をありがとうございます。
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2 Comments

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2019/03/29 (Fri) 01:07 | REPLY |   
nainai

nainai  

星様

おはようございます。初コメントありがとうございます!
SSで和んでいただけたようでとても嬉しいです(*^^)v

『forecast』、『come to light』の二人はとにかく幸せいっぱいです。なんと学生結婚。しかも周囲には内緒(^^♪ 甘々の要素しかありません。
原作分岐の関係もありましたが、桜子と滋を出すと、つくしは絶対に秘密を隠し通せないだろうと思いました。特に桜子の目はごまかせないでしょうからね。二人は残念ながら出番なしです。
事実を知ったF3がどう出てくるのか、どうぞお楽しみに♪

本編の方ではたいへん気を揉ませているようで申し訳ございません(;^ω^) もともとシリアスが得意なのでどっぷりと暗い展開に…。まだまだハラハラさせてしまいますが、最後のハッピーエンドを信じてついてきてくださいね。
更新&執筆頑張ります!

2019/03/29 (Fri) 06:15 | REPLY |   

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