FC2ブログ

come to light ~中編~

Category9万HIT記念
 4
「で、総二郎にバレたんだ」
「うん。…ごめんね」
「道理で。変なメール来てたから。…なんか面倒そうで、読むのやめたけど」

その日の夜、取引先との会食を終えて少し遅く帰ってきた類に、あたしは事の顛末を説明した。すぐ傍には康江さんも控えていて、ひたすら恐縮している。自分の言動が、あたし達が守ってきた秘密を露見する原因になってしまったと、彼女はすっかりしょげ切っていた。
類はきっと怒ったりしないから大丈夫だって、何度も何度も励ましたんだけどね。

あの後、あたしは小1時間ほど西門さんに拉致られ、プロポーズから現在までをプレイバックさせられた。彼が納得するまで、ことごとく詳細にね…。


「じゃ、俺も謝んないと」
「……?」
「実は、少し前にあきらにバレてた」
「えぇっ、そうだったの?」
類はすぐには答えず、意味深な笑みを浮かべる。
「俺もうっかり口を滑らせたくらいだし、康江も気にしなくていいから」
類は穏やかにそう言い、康江さんに部屋を下がらせた。


あたしは不思議だった。
類ほどの人が口を滑らせるって、いったいどういう状況だったんだろう?


「ねぇ。どんなふうに美作さんにバレちゃったの?」
再度あたしが問うと、彼は黙ってあたしの右手を引いた。
どうやらバスルームへのお誘いらしい。
「左手、痛いだろ? 今日は俺が洗ってあげるね」
「み、右手が使えるから、自分で…」
「遠慮しないでいいよ。…あきらにバレた経緯は、お風呂で話すから」
ね?と小首を傾げてキラースマイル。


…あぅぅ。
あたし、類のこの顔に本当に弱いんだよね…。




結婚してから変わった生活習慣の一つに、一緒にお風呂に入るようになったことも挙げられると思う。それまで恥ずかしくてできなかったことも、“結婚したんだから”“夫婦なんだから”という一言を前置きされたら、なんとなくできるようになるものだ。

最初の頃は、入浴中に気持ちが盛り上がってしまって…その…困った事態に何度も陥った。あたしが逆上せたりとか…。
でも結婚して1年が経った今は、そうした視覚的な誘惑にお互い寛容になったと思うし、スキンシップや入浴そのものを純粋に楽しめるようになった気がする。

大好きな気持ちに変わりはないけど、何て言ったらいいのかなぁ。
愛のカタチが変わってきた…みたいな? 
うまく言えないけど、夫婦らしくなってきたってことなんだと思う。


今日はあたしが左手首を痛めているからと、頭のてっぺんから足のつま先までを念入りに洗われた。あたしを世話するときの類は本当に楽しそう。優しく触れる類の手が気持ち良くて、ひさびさに逆上せてしまいそうだ…。

浴槽を満たす乳白色のお湯からは、ふんわりとすごくいい香りがする。
この入浴剤、リラックス効果が抜群なんだよね。
痛めた手首をバスタブの縁に乗せてタオルで冷やしながら、あたしは類が入ってくるのを待った。


「はぁ~、極楽ぅ~」
あたしの一言に、類が小さく笑った。
二人でゆったりと湯船につかるこの時間が好き。
類の肩に後頭部を預けて、後ろからゆるく抱きしめられているとすごく安心する。
うっかり寝落ちしてしまいそうなくらいに…。


…おっと、ダメダメ。
今日は聞かなきゃならないことがあるんだった。


「話、聞かせてもらえる?」
「…ん。いいよ」
約束通り、類はあたしに詳細を明かしてくれた。
「あきらがさ、妙なことを言い出したんだよね…」
類の話はこうだった。




******




―卒業式の2日前。

俺とあきらは、大学の最後のゼミに顔を出した。
あきらとは4年で選択する必修ゼミが一緒だった。
その帰り、向こうの車で自宅まで送ってもらったときのこと―。


「なぁ、知ってるか? 最近の牧野の下馬評げばひょう
あきらから振られた自分の妻の話題に、俺は内心穏やかじゃなかった。
でも、そんな素振りは見せずに平然と応じる。
「…知らない」
「俺もチラッと聞いただけなんだが、1年生の間で牧野の評価が鰻登りらしい。なんか、やったんかな?」
「さぁ…何も聞いてないけど…」


本人に自覚はないけど、つくしは超がつくほどのお人好しだ。
英徳という特異な階級社会の中にあって、一般家庭の出自の彼女は、庶民だ貧乏だと陰で蔑みを受けたり、俺と交際していることで無視や敵視をされたりと、それなりに嫌な目にも遭ってきた。
だけど、気持ちがヘコたれないし、いつでも誰にでも分け隔てなく優しいんだ。俺以外の人間に、優しさなんて振り撒いてやらなくてもいいと思うのにさ。


絶世の美女でもないし、深窓の令嬢でもない。
だけど、溌溂とした笑顔とその内面にある強さや美しさに気付けば、誰だって彼女を好きになるんじゃないかと思う。
実際、俺の周囲にはそうした奴が多い。
…司はその筆頭かも。渡米してくれて本当に良かったと思う。


だから、俺はいつも不安。
俺達はもう結婚してるんだ。彼女は俺の物なんだって公言したい。
常々、その欲求と闘っている。


この春から俺は社会人で、彼女にはまだ1年間の学生生活が残っている。
結婚を公表することのメリット・デメリットを考えれば、総合的にはデメリットが上回る気がする。彼女であることと、妻であることは似て非なるものだから。つくしに対する周囲の接し方も大きく変わるだろうし、それが彼女の望む形でないことは明らかだ。
冷静に考えれば、それは分かるんだけど…。



「どうも1年生の中に、牧野にご執心の奴がいるらしい」
「…誰?」
「崎島コンツェルンは知ってるよな。そこの次男坊が1年に入ってきたんだ。…顔はお前の系統だな」
と、ここで、あきらがニヤニヤ顔に転じる。
「どうする? 彼氏の立場に甘んじてると掠め取られるぞ。…あいつ、セレブキラーの異名を持ってるからな」
俺はため息をつく。
「大丈夫。気遣いだけもらっとく」
「なんだよ。余裕だな」


余裕はないけど、社会的なリードはしてるよ。
俺達は、あきらが思う以上に、固い絆で結ばれてるから。
真偽はともかく、崎島って奴にはちょっかいかけるなって、脅しておく必要はありそうだけど。


俺があまりいい反応をしないのが心配なのか、気に食わないのか、あきらがまだゴチャゴチャと言っている。A型気質らしく細やかな性格で、面倒見はいいけど小うるさくもあるんだよね。ほんと。
「卒業したら、今のようには会えなくなるんだぞ?」

いや、毎日会ってるし。
それで、つい言ってしまった。
俺達、もう結婚してるから、と。

しまった、と思ったときには遅かった。
あきらが固まっている。ポカンと口を開けて。
色男が台無しのレベルだ。
唖然とした親友の顔を見て、秘密をバラしてしまった罪悪感を忘れ、俺はつい吹き出した。





Happy birthday to Rui!
今日のために、いろいろなサイトで類BDのお話があって楽しいですよね。
相も変わらぬ愛されキャラなんだなぁと、とても嬉しくなります。
現在も、一読者であることを忘れてはいない管理人です(*'▽')

連載の更新の兼ね合いで、後編は明後日にUPします。
お楽しみいただければ幸いです。


いつも拍手をありがとうございます。励みになります~(*^^)v
関連記事
スポンサーサイト



4 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/03/30 (Sat) 22:34 | REPLY |   
nainai

nainai  

み様

こんばんは。いつもコメントありがとうございます(*'▽')
前の記念SSの時にも、祝辞を頂戴しましたね。
管理人の成長を見守っていただけているようで、本当に嬉しく思います。

つくしも、類も、結婚していることを周囲に明かしたいという気持ちはあるんですよ。しかし、そうなると花沢家への橋渡しを期待した輩が、つくしに群がってくる可能性がある。本人は超がつくお人よし。卒業してしまえば花沢家で彼女を守ってあげられるから…というご両親の配慮だったりします。
でも、親友にはいいんじゃないの?というつくしに対し、類はだんまり……。当然F3の仕返しが待っています!

本編についてもいろいろコメントしたいところですが、話すとボロが出てしまいそうです(;^ω^) 
謎が解ける日まで、今しばらくお待ちいただければ…。最後までよろしくお付き合いくださいませ。

2019/03/31 (Sun) 00:34 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/03/31 (Sun) 12:37 | REPLY |   
nainai

nainai  

ル様

こんばんは。コメントありがとうございます(*^^)v
もう体調は良くなられましたか? 昼夜の気温差が大きい時期なので体調も崩しやすいですよね。類誕のリアルタイムの賑わいもいいですが、時間ができてからのサイト巡りも楽しいと思いますよ~。

うちのSSですが、つくしは総二郎に、類はあきらにバレてしまいました。当然司の耳にも入ります。後編はF3からの仕返し編です。お楽しみに!

ル様の書いてくださった不等号式ですが、私は1番と2番の位置が逆であとは一緒です。その感じがお話にもよく出ているような気がします。出現頻度とか…w
今夜は連載のUPです。シリアス展開が続きますがよろしくお願いします<(_ _)>

2019/03/31 (Sun) 20:43 | REPLY |   

Post a comment