FC2ブログ

come to light ~後編~

Category9万HIT記念
 0
「あの…崎島さんって誰?」
類の話を聞き終わり、まず疑問に思ってしまったのがそこだった。
だって、全然記憶にないんだもん。…1年生?
「むしろ俺が訊きたいよ。…親切にしてやったんじゃないの? 無意識にさ」

…あ、類の声が少し冷たい。
その声音に彼のジェラシーを感じて、あたしはちょっと嬉しくなる。
でも、心配なんてしなくていいのになぁ。
あたしは、出会った頃からずっと、類ひと筋だよ?

「で、つい口が滑っちゃったの?」
類の話を総括するとそういうことなんだろう。
でも、同意は返らなかった。類の腕の力が少しだけ強くなり、彼に引き寄せられたあたしの心拍数も、比例するように少し上がった。
「…どうかな。つくしは俺のだって、自慢したくなっただけかも…」
項に触れる類の唇にもっとドキドキした。
「いい頃合いだったんじゃないかな。美作さん達に黙ってるの、あたしも気になってたし…」
「…ん…」


そろそろ出ようか、と声をかけられて、あたし達は連れ立って浴室を出た。
のんびり話をしていたせいもあり、時刻はいつの間にか午前を回っていた。
類は、甲斐甲斐しくあたしの世話を焼き続け、ドライヤーをかけて髪を乾かしてくれたり、まだ腫れている左手首に冷たいシップを貼ってくれたりした。

これぞ、怪我の功名ってやつじゃないかなぁ…。
類があたしにしてくれることの一つ一つに愛情がこもっていて、ものすごく幸せを感じてしまうんだけど。


類の気持ちも分かるよ。
あたしも大声で言いたいなぁって思うときがあるから。
この素敵な人は、あたしの旦那様なんだよ。あたしの物なんだからって。


寝支度が整い仲良くベッドにもぐりこんで数秒後、あたしはあることを思い出した。
「あっ、そうだ!」
「何?」
「西門さんのメール、結局見てないんだよね?」
「……あぁ」
類が面倒臭そうに返事をする。
「何が書いてあるか教えて? ちょっと気になって…」
「一緒に見よ」

類はサイドテーブルに置いていたスマートフォンに手を伸ばし、西門さんのメールを画面に出した。文面を目で追い、あたし達はほぼ同時に彼のメールを読み終えた。
「「…えっ…」」
読後の反応もタイミングもまったく同じで、あたし達は頭をくっつけてクスクスと笑い合った。リップ音付きのバードキスを交わした後、あたし達は眠りについた。




その週末、あたし達はメープルホテルの最上階の特別室に呼び出された。
どうやらF3が直々に、あたし達の結婚を祝う会を催してくれるらしい。偶然か否か、それは類の誕生日の前日だった。
その名目だけ素直に信じていいものかと訝しみながら顔を出すと、西門さんと、美作さんと、渡米して久しい道明寺が揃っていて、…皆が皆、とっても悪い顔をしていた。

道明寺は、相も変わらず面白い。
「なんだよ、二人して! 水が臭ぇヤツらだよな!!」
…惜しい。『が』が余分だったね。
あたしは何とか笑いをこらえたのに、くっくっと笑い出してしまった類に、道明寺はますますカッカとしてしまって、祝賀会は最初から波乱含みだった。


類はあたしには絶対飲まないようにと固く言い置いていて、彼の予想通り、その夜は飲んだくれの会になった。結婚の事実を黙っていたことに対する非難の集中砲火は、類に浴びせられ続けた。
親友から注がれる祝い酒を、類は次々に空けた。かなりのハイペースなのが心配だったけれど、会に参加する前の嫌そうな様子とは裏腹に、その表情は実に楽しそうだった。


「あ~ぁ、寝ちゃった…」
酔い潰れてあたしの膝の上で眠ってしまった類の、その柔らかな髪を撫で梳く。
いつもは白い顔が真っ赤に染まりきっている。
「…おい。イチャイチャすんなよな」
不貞腐れたような道明寺の抗議に、あたしは小さく笑う。
「大目に見て。…明日、二日酔いしないといいけど」
「平気じゃね? これくらい」
いやいや、あんたと類を一緒にしないで。ほんと、蟒蛇うわばみなんだから!


「牧野、喉乾いたろ。ウーロン茶でいいか?」
「あっ。ありがと!」
まだまだ余裕のある美作さんは、その目元を赤くしつつも気配りを忘れない。
さすが、あたし達の兄貴分。
「…というわけで、改めてつくしチャンへ。これ、俺らからの結婚祝い」
ちょっと目の据わった西門さんが言う。
どこから出してきたのか、30㎝四方の箱が一つ、ズイッと差し出された。
「…な、なんで、類が起きている間に出さないの?」
「まぁまぁ。開けてみ」


…やだよ。嫌な予感しかしないから…。


3人の圧力に負けて箱を開封すると、中身は見たことのないアレやコレやだった。
いわゆる、大人のおも……モゴモゴ。
…分かってた。分かってたよ。こいつらの思考回路は。
でもね、あまりにお約束なプレゼントで、顔から火が出そう…。

コレなんて、一体、どうやって使うものなわけ?
でも、そんなことを口にしたが最後、目の前でレクチャーよろしくデモンストレーションを始めるに決まってる!


お祭りコンビは至って普通だけど、道明寺にはちょっと照れがある様子。
そうした彼の純真さが、ある意味であたしには救いだった。
「…なんで、これがお祝いなの?」
恨めし気に3人を見つめると、
「なんでって、二人のお熱い夜のために?」
西門さんがニヤッと妖艶に笑う。

…要らないよ。十分に熱いもん。

あたしの心の声が聞こえたのか、
「甘いぞ、牧野。…どうせマグロなんだろ? そんなんじゃすぐ類に飽きられるぞ」
と西門さん。
「…マグロ」と呟き、赤面したあたしに、
「マグロって? 牧野はどう考えたってイワシかアジだろ?」
と道明寺が一言。

…いや、違うよ。
ここでの引用は魚種の問題じゃないの。
ってか、道明寺のイメージではあたしはイワシかアジなわけね?
どっちも美味しいからいいけどさ。

説明してやる気にならず、皆でそのままスルーすると、
「年若く結婚したんだ。これから一緒に過ごす夜を数えたら、そういうアクセントのある一夜もいいんじゃね?」
と美作さん。
なんか尤もらしいことを言ってるけど、最終的には推奨派なのね…。
「「「そういうわけで、受け取れ」」」


…要らないってば。
でも、類はどう思うのかな。
もしかしたら、そういうのもアリって思うかな?
にっこり笑って、それもいいかもって言う姿が想像できなくもない…。


「…要らない」
あれ? 
あたし、今、声に出した?
「…予想に違わず、ろくでもないね。…だから、嫌だったんだよ」


あたしの膝の上で眠っていたはずの類がゆるゆると身を起こし、お祝いの品をズイッと手で押し退ける。ふぅーっと大きく息を吐き、気怠そうに言った。
「お祝いを口実に、つくしをからかわないで。それは熨斗つけて返してやる。…それと、あきら」
「…は? 俺?」
唐突に名指しされた美作さんが軽く目を剥く。
なんで、ここで美作さん?
「つくしが人妻になったからって、食指を動かしたら承知しないから!」
そこまでを一気に言うと、類は電池が切れたみたいに、またあたしの膝の上に横になった。


「…だとよ」
「くくっ、それが俺らに秘密にしておきたかった最大の理由か?」
「ここに人妻専門がいるからな」
「言うな! つーか、もう違うからな!」
「ホント素直になったよな~。こいつ」
3人は楽し気に類を見つめる。
その視線の中に温かな親愛の情を読み取り、あたしは嬉しくなる。
「…類を頼むな」
道明寺からボソッと発せられたその一言に、あたしは大きく頷いた。
「それは任せといて!」



ねぇ、類?

類は嫌だったみたいだけど、あたしは彼らに秘密がバレてよかったと思ってるよ。
道明寺の、西門さんの、美作さんの友情は、確かにちょっとウザったらしいところもあるけど、皆が皆、類の幸せをこんなにも願ってくれている。

男同士では、面と向かって言わないかもしれないけど、あたしの目には彼らの想いがはっきりと見える。それって、他の何にも代えがたいものだと思うんだよ。





時刻が午前0時を迎える。
3月30日へと日付が変わる。
あたし達は声を揃えて、眠っている彼に向けてこう言った。

「Happy birthday! 類!」





~Fin~






さて、いかがでしたか? 
『forecast』の続編、『come to light』は二人が入籍してから1年後のお話です。
『結婚したら変わることは何か?』をテーマに、つらつらと書いてみました。
私事ながら、管理人は病院を受診して新しい苗字で呼ばれた時に、結婚したんだなぁと実感しました(*'▽') 前編のエピソードに近いですね。

新婚ホヤホヤより、やや時間が経過して、落ち着いた二人のやり取りが書きたいと思いました。入浴そのものをただ楽しんでいる部分に、夫婦の仲睦まじさを感じていただければ本望です(笑) 


つくしに対して、わずかに恋心を残す道明寺。(彼の初恋は一応つくしちゃん)
つくしの女性としての魅力を理解しているあきら。(クレセントムーンのイメージ)
ただただこの状況を愉しんでいる総二郎。(がっつり友人)
という三者三様の立場を描いてみました。
類の警戒度は、あきら>>司>総二郎 というところでしょうか。

今回は類のbirthdayが重なり、より楽しくお話が書けました。連載の本編がしばらく苦しい展開なので、SSで少しでも和んでいただけましたら幸いです。




いつも拍手をありがとうございます。類BD&記念SSでした。
関連記事
スポンサーサイト



0 Comments

Post a comment