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Category第1章 紡いでいくもの
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「4年後に迎えに行きます」
道明寺財閥の御曹司である道明寺司が、詰めかける報道陣に向けてそう高らかに宣言し、NYに旅立ってから2年半。
東京とNY。
直線距離にして約18,000km、時差にして14時間。
距離も時間も破格に離れたあたし達の遠距離恋愛は、周囲の温かい助力のおかげでどうにか続いていた。

渡米してからのあいつの多忙ぶりは驚くべきものだった。
直接会うことなんてほとんどできなくて、テレビ電話の間隔さえ間遠くて…。
それでも、あたしは自分達を結ぶ絆を信じていたし、何より道明寺の真っ直ぐで熱い気持ちを信じていた。

あいつは大財閥の後継者として、その地位に相応しい力をつけるため懸命に努力していたし、あたしもそんな彼を支えることができるように、教養を身に付けようと精いっぱい努力していた。

―けれど、懸命に努力をしていたところで、叶わないことはいくらでもある。


そのことを身をもって知ることになったのは、道明寺が20歳、あたしが19歳の夏のことだった。彼のお父さんが、…つまり道明寺財閥総帥、道明寺至氏が、長患いの心臓病のためにこの世を去ったのだ。
享年48歳。…亡くなるにはあまりに若過ぎた。

鉄壁の要塞のように思われていた彼の会社も、総帥の早世には根幹を揺るがされた。
歯止めの利かなくなった株価暴落には、兼ねてからの至氏本人や妻の道明寺楓氏による強引な経営手腕も影響していたに違いないが、財閥はかつてないほど追い込まれ、大きな事業縮小の危機に迫られた。

その危機を救うために、道明寺の閨閥けいばつ結婚(妻側の実家の権に頼る結婚)が持ち上がるのは当然の成り行きで。

あたしより先に社会に出て、自分の立場や使命というものを多分に自覚していた彼は、もうあたしだけの彼ではなくなっていた。
とても悲しいことだけれど、あんなに自己中心的で、我が道を貫いていた彼が、後継者として冷静な判断ができるようになっていたことは、ある意味であたしには誇らしかった。彼の決断は早かった。


テレビ電話で別れを告げたときの彼の顔は、哀切に歪んでいた。
―すまない。
―直接会いにも行かず、こんな話をする無礼を許してほしい。
―俺と、別れてほしい。
―お前との未来だけがほしかったのに、俺に力が足りないばかりに結局叶えることができなかった。


あたしは涙を見せなかった。
道明寺に最後に見せる顔が、泣き顔じゃ嫌だと思ったからだ。
―いままでたくさんの愛をありがとう。
―ずっと、見守ってる。あんたが行く道を。
―だから体に気をつけて、前を向いて頑張ってほしい。
―あたしも、あたしの歩むべき道を進むから。


そういった趣旨のことを、あたしなりの言葉で一生懸命伝えたつもりだ。顔を合わせれば意地を張ってしまって、素直になれなかったあたしが、どんな抵抗感すらなく、自分の思いの丈を伝えた瞬間だった。
こうして、あたしと道明寺の恋は静かに終わりを告げた。



あたし達が付き合っていたことは公然の事実だったから、その別れについて知れ渡るのも早かった。彼の薦めるままに英徳大学に進学していたあたしは、どうしたって周囲のそうした好奇と侮蔑の目にさらされてしまう。

「ほら、あの人よ。道明寺様に捨てられたっていう…」
「え~っ。あんな地味な人がそうなの?」
「ね、笑えるでしょう…そもそもさ…」

付き合っているときでさえそういう声もあったけれど、別れてからは一層ひどく無遠慮な噂話が聞こえてくる。わざわざあたしの前に回ってきて、あざけわらうような失礼極まりない人もいた。


『捨てられた』という言葉に、心のおりが溜まっていく。
いつもは気丈なあたしでも、そういった憂鬱なことが続けばやっぱり精神的にこたえてくる。道明寺との別れをまざまざと認識させられ、その度に傷つき、あたしは英徳での大学生活にほとほと嫌気がさしてきていた。


道明寺との未来のためには、経済学を知る必要がある―。
あいつと大学での専攻について話し合った結果、もともと興味のなかった経済学部に進学したあたし。でもすべてがご破算になった今、あたしはこのままでいいのかと悩むようになっていた。
卒業まであと2年半。ここで学んでいくべきなのか。

もちろん予定されているカリキュラムを修了しても、それなりの企業には就職できるだろう。英徳の名はブランドだ。利用しない手はないと思う。
それでも一度しかない人生、自分の学びたいこと、やってみたいことに挑戦してみるべきではないか。
あたしは日に日にそんな思いを強くしていた。


理解のない周囲が嫌だからという逃げの理由ではなくて、あたしがあたしらしい生き方を学んでいける場所へ転学したい。
そう思うようになったきっかけは、もちろんある。

―それは、ある女性と出会ったこと。

彼女との出会いが、あたしをいままでとは異なる世界へといざなってくれた。
その世界に飛び込んでいっても、決して楽な生き方はできないのかもしれないけれど、生まれて初めて感じたやりがいに、あたしの心は大きく突き動かされていた。




原作の流れに沿うと、つくしと司を別れさせるには、司の閨閥結婚しかありえないだろうなぁ…と思ってしまいます。
オリジナリティのない展開で申し訳ないです。
二人が別れた事実だけそこにあればよし…ということでお願いいたします。




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2 Comments

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2018/05/09 (Wed) 23:37 | REPLY |   
nainai

nainai  

まり様

コメントありがとうございます!

導入部分ですね。…司にはいつも申し訳ない展開です。
公言されてしまったばかりに、つくしはつらい環境下におかれてしまいます。
まさに針のむしろ…。

自分の将来を見据えて、彼女がどんな選択をするのか、どうぞ見守っていてくださいね。

2018/05/09 (Wed) 23:45 | REPLY |   

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