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視線 ~4~

Category*『視線』
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翌日はちょっとした騒動が起きた。
昼休みになるとすぐ、あたしの教室に彼が迎えに来たのだ。

黄色い声の先を目で追えば、そこに花沢類の姿。
あたしと目が合うと、その片手が上がって、おいでと手招きされる。

うひゃ…。かなり恥ずかしいんだけど…。
あたしは弁当箱を持って、彼の傍に駆け寄った。

「ど、どうしたの?」
「来て」

どこに、と問う間もなく、空いている方の手を取られる。
空港の時よりも、もっと大きな悲鳴とざわめき、そして痛いほどの視線…。

花沢類はそれらに一切構うことなく、あたしの手を引く。
その歩調はやっぱり速くて、あたしは小走りに彼についていった。




連れていかれたのは、カフェテリアにあるF4専用ラウンジ。
どうやら、花沢類ともども、あたしはF3に呼び出されていたらしかった。

花沢類とあたしが姿を見せた途端、カフェテリア内に波紋が広がった。
どこに行ってもこの反応。
…ま、当然か。
手、繋いじゃってるし。

おそらくその場にいた全員の視線を浴びながら、階段を上がっていく。
他の三人はすでに到着して、ソファで寛いでいた。
いや、道明寺は寛いでいるって雰囲気じゃないみたい…。



「話って?」

向かいのソファに座るや否や、そう切り出した花沢類。
ここでも、繋いだ手は離さないままに。
道明寺はそこに目を留め、眼光をさらに鋭くした後で一気にまくし立てた。

「類、どういうつもりだ。お前は、静が好きなんだろ!? なんでその女と恋人ごっこしてんだよっ!」

…恋人ごっこ…。

道明寺の放った言葉はまさにぴったりの表現で、あたしの心を深く抉った。
それと同時に、ふわふわしていたあたしの頭の芯を、急速に冷やしていく。

やっぱり……ヘンだよね。
誰が見たって釣り合わないよね。
静さんとなら均衡を保てる関係性は、あたしとなら不自然に映る。

「…ごっこのつもりはない」

ぎゅっと強く握られる手。
まるで励ますみたいに。

「俺には、牧野が必要になるって気付いただけ。だから一緒にいる」
「…それ、本当に好きだって感情か? そいつが物珍しくて、勘違いしてるだけじゃねーのか」
「違う。…第一、それをお前に言われる筋合いないし」

花沢類の声のトーンが下がった。
彼から発されているのも怒りの感情。
道明寺の怒りが紅い炎なら、花沢類のそれは蒼い炎だ。



「…くくっ。司はさ、疑問なんだよ」

炎の均衡を崩すように話し始めたのは、西門さんだった。

「は? …疑問?」
「類。お前が、静に恋してたのは紛れもない事実だよな。それも一年や二年の話じゃない。ちっせぇ頃からずぅーっとだ」
「牧野が、これまで出会った誰よりも、ガッツとインパクトのある女だってことは認めるよ」

続けて美作さんも話し始める。

「先に言っとくが、俺らは牧野をディスるつもりはないぞ。司に一喝入れるなんざ、椿ねーちゃん以来で、ある意味で賛辞に値する行動だったしな」
「あきら! 余計な話すんな!」
「まぁまぁ。…で、静は静で、家からの独立を宣言して、しっかり自分の夢を持ってる。誕生パーティーのあいつ、本当にカッコよかったよな」
「司が言いたいのは、立派すぎる静への気持ちが報われそうにないから、お前が手近で手頃な牧野に逃げてるだけじゃないかってことだよ」

西門さんの一言も、あたしの心を深く抉った。

「牧野が類を好きなことくらい、誰が見たって分かる。なんたってマイ・ヒーローだもんな? だが、類の方が、無意識に静の身代わりを求めていて、親愛を恋愛と混同してるなら、牧野が可哀想だろってこと」

…あぁ。その疑問、よく分かってしまう。
「この手を取って」と花沢類に言われた時、脳裏を過った疑問とそっくりそのまま同じだったから。



身代わりじゃ嫌だよ。
あたし自身を好きでいてほしい。

でも、花沢類に好きになってもらえる自信がない。
あの静さんより、好きになってもらえる自信がない。


泣きたい気持ちとは少し違った。
やっぱり…という諦めにも似た、自分を卑下してしまうようなそんな気持ちで。
あたしは顔を上げているのがつらくなって、ゆっくりとうつむいた。

でも、こうした疑問は先送りするより早めに突き詰めた方がいい。
そして、真実を見極めた方がいい。
後々になって、やっぱり勘違いでしたってのは、あまりにつらすぎる…。


花沢類、なんて答えるの?


あたしは、いいよ。
勘違いだったって言ってくれても。


今なら何を言っても許してあげるよ。
あたし達の間には、まだ、何も始まっていないから。
だから、本当の気持ちを話してくれないかな。






いつも拍手をありがとうございます。応援を励みに頑張ります(*^^)v
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2 Comments

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2019/07/16 (Tue) 14:05 | REPLY |   
nainai

nainai  

ゆ様

こんばんは。いつもコメントありがとうございます♪
なんとか2日に1回の更新ができてはいるのですが、物語の進行がゆっくりですみません(;^ω^)

今作はなるべく原作寄りの(専ら初期の頃の)イメージで描きたくて、類は無口かつ言葉足らずのままです。もうちょっとつくしを気遣ってあげてほしいところですが、まだその境地には至れず…。

さて、類がなんと答えるか。どうぞお楽しみに(*^-^*)

2019/07/16 (Tue) 22:41 | REPLY |   

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