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視線 ~18~

Category*『視線』
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花沢類はあたしと付き合うようになってから、F3との関わりが若干薄くなったようだ。つるんで出かけることがなくなった、とこぼしたのは美作さんだったと思う。
…いや、夜遊びされても心配なんだけどね。


F3のあたしに対する接し方は、以前よりずっと気安いものになった。
西門さんと美作さんは、会う度に『まだ(処女)か?』って訊く。
それはもう、挨拶代わりかってレベルで。

それに答えなくても、あたしの顔色で答えは分かるらしい。
リトマス試験紙のようだとからかったのは、西門さんだったと記憶している。


道明寺はというと、ちょっと落ち着かない接し方で。ある時は無視したかと思えば、ある時は急に近づいて話し出して、なんか照れ始めたり。
喜怒哀楽が激しい。以前より輪をかけて激しい。
言うなれば、挙動不審?

その様子を見つめる、西門さんと美作さんはすごく楽しそう。
…何なのよ。子供の成長を見守るような、その生ぬるい視線は。


それを花沢類に報告すると、彼はすごく嫌そうな顔をした。
ここ最近、道明寺とはあまり口をきいていないと言う。
「司のことは、委細構わず放っておいて」
という彼の言葉に従い、なるべく深入りしないようにしているつもり。




11月の第一日曜日、午後2時。
用事があって都内に出かけていたあたしは、千石屋の近くで花沢家の車にピックアップしてもらった。今日は彼のお出迎えもあって、とても嬉しい。
リムジンはそのまま花沢類の自宅へと向かった。


辿り着いた先は、武家屋敷みたいな大きな、大きな日本家屋だった。
道明寺邸には一度、強制的に連れ込まれたことがある。
それでなんとなく花沢邸も洋風だと想像していたあたしは、そのギャップにビックリ。さらには庭園の広さに度肝を抜かれる。

都内の一等地にこの広さの敷地を有するって…。
その資産額を想像すると怖いからやめておく。




「「「いらっしゃいませ」」」

あたしを出迎えてくれたお手伝いさんの数の多さにまたビビる。
皆、柔和な笑顔を浮かべていたけれど、頭のてっぺんから足のつま先まで、くまなく観察された気がした。

…そりゃ、そうだよねぇ。
大事なお坊ちゃんがどんな人を連れてきたのか、おうちの人は心配だよね。
すっと前に歩み出てきた女性を示し、彼女がここの長だと花沢類が説明する。

「初めてお目にかかります。松川と申します」

ドキドキしながらあたしも自己紹介を終えると、花沢類がもういいよとばかりに手を引いた。長い廊下を抜けると、一番端の区画に彼の部屋はあった。



「何もない部屋だけど」

そう言って案内された部屋は本当にシンプルだった。
床は明るいウッド調のフローリングで、壁面はアイボリーホワイトのクロス。
部屋の中央に大きなベッドが一つ。壁掛けの大きなテレビが一つ。
座り心地の良さそうな二人掛けのソファと、ローテーブル。
まるでモデルルームのような生活感のなさに驚く。

「勉強机はないんだね?」
「書斎があるから」

勉強部屋は別かぁと妙に感心していると、コンコンというノック音。
松川さん達がお茶の準備をしにきてくれたみたい。

運ばれてきたフィンガーフードの数々に、あたしは目を丸くする。
大きなプレートには、一口サイズの軽食やスイーツが美しく配置されていた。
まるでカフェにいるみたい。
お洒落だし、すっごくおいしそう…。



花沢類がリモコンのボタンを押すと自動でカーテンが閉まり、天井からはホワイトスクリーンが下りてきた。壁のプロジェクターからは真っ白な光が放出され、前のスクリーンを照らす。
へぇぇ。これがホームシアターかぁ…。

「どれ観る?」

映画リストの中から、彼もまだ観ていないという本格ミステリーをチョイスする。
昨年アカデミー賞にノミネートされた作品だという。

二人掛けのソファは心持ち狭くて、あたし達は肩をくっつけて座る形になる。
あわわ。どうしよ…。
この状況、すっごいドキドキするんだけど。

映画の内容、理解できるかな。






いつも拍手をありがとうございます。おうちデート編です。
テレビっ子の類なので、部屋にホームシアターも設置させてみました(*'▽')
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