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視線 ~44~

Category*『視線』
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数日後、牧野家に起きたことが徐々に明らかになる。
そして、牧野本人の足取りも。


俺は関係先に足を運び、情報を集めた。
一番大きな収穫は、社宅で牧野姉弟と親しかったという女子中学生から話を聞くことができたことだ。相手は森田悠と名乗った。

更なる情報収集にあたってくれたのは、親友達と祖父。
それぞれが持つネットワークを駆使してもらった結果を、時系列に纏めるとこうだ。
祖父が警告していたように、牧野が隠していた事実は予想以上に過酷なものだった。




12月25日
【午前】
牧野と弟の進は、同じ社宅に住む102号室の森田家を訪問。
母、千恵子が投資ファンドの勧誘活動をしていることを聞く。
その後、千恵子のパート先へと向かうも、非番である旨を告げられる。
【午後】
牧野は千石屋に遅刻して出勤。馬場の送迎はこの日が最後。



12月26日
【午前】
牧野夫妻は仕事を欠勤。
【午後】
牧野は千石屋に出勤。
夕方、インフルエンザに罹患しているという虚偽の連絡を俺に寄越す。



12月27日
【午前】
牧野は千石屋に出勤。
牧野夫妻はこの日も仕事を欠勤し、二人で警察署を訪れている。
千恵子は高額配当を謳う投資ファンド詐欺に引っかかっていた。
同日、被害届を提出。

『川野』と名乗る女性に持ち逃げされた出資金の総額は230万円。
内訳は、牧野家80万円、勧誘された友人3人が50万円ずつ。
投資会社は経営実態のない、いわゆるペーパーカンパニーだった。

【午後】
牧野晴男が勤務先に出社。
妻の不適切な勧誘活動について、上司から説明を求められる。
晴男は、妻は加害者となったが被害者でもあったことを訴える。
会社からは事態収拾のため退職・出向を打診される。晴男はこれを留保。

牧野は昼休みの時間帯に千石屋から外出。
英徳高校の総務課を訪れ、退学届を提出。これを受理される。


奇しくも、その日は俺も英徳を訪れている。
ブロス夫妻の娘に英徳大学の構内を案内する約束があったためだった。
高校と大学とで訪れたエリアは異なるものの、滞在の時間帯は重なっていた。
だが、俺は牧野の姿を確認していない。



12月28日
【午前】
牧野晴男に改めて出向の打診あり。
赴任先として愛知県豊橋市にある会社が告げられる。晴男はこれを受諾。
【午後】
牧野は午前のシフトを休み、午後から千石屋に出勤。
引っ越しの話を女将と松岡優紀に伝える。


晴男の赴任先はあくまでも別会社であり、本社復帰はあり得ず、事実上の退職となる。彼は業績不振だったためリストラの対象者リストに上がっていたが、それでは詐欺被害に遭った一家が路頭に迷うことを案じた幹部の計らいで、異例の出向が決まったようだ。



12月29日
【午前】
千恵子が引っ越し業者を手配。業者が下見に訪れ、その場で契約。
牧野は再び102号室の森田家を訪問。情報提供への感謝を述べる。
【午後】
牧野は千石屋で仕事納め。女将と松岡優紀に別れを告げる。



12月30日
【午後】
18時半、牧野が花沢邸を訪問。俺と別れたい旨を申し出る。
俺が承諾しなかったため、1月6日に再訪問することを約束。
このとき、自宅へ送ることは拒否される。

20時頃、牧野は宗像家への贈答品を渋谷駅近くの百貨店から発送。
同15分、スマートフォンを同駅構内のコンビニから発送。
同30分、駅の改札を抜けたところまでが確認されている。



1月4日
【午後】
松岡優紀に牧野からの連絡が入る。親戚宅で世話になるとの発言あり。
このとき使われた公衆電話は、静岡駅構内に設置されたものだった。
以降の牧野の足取りは不明。



1月5日
【午前】
牧野夫妻が社宅を出る。
引っ越しの際、子供二人の姿は目撃されていない。



1月6日
【午前】
牧野晴男が出向先の会社に初出社。
牧野家全員の住民票が愛知県豊橋市に移される。
花沢邸に牧野からの荷物が届けられる。差出人欄は都内の旧住所のまま。
中身はスマートフォンと手紙の2点のみ。



1月7日
【午前】
英徳高校の新学期が始まる。牧野の退学が発覚。
【午後】
あきら・司・総二郎に情報収集を依頼。
宗像邸に牧野からの贈答品が届けられる。差出人欄は旧住所のまま。
祖父にも情報収集を依頼。
俺は、千石屋、松岡家を順次訪問する。





そして現在、1月16日。
依然として、牧野と弟の現住所が不明なままだ。
住民票は両親と同じ住所で登録されているが、その場所には牧野の両親しか住んでいないことが分かっている。

高校生の牧野はともかく、弟の進は中学生で義務教育の範疇にある。
現住所が別だとしても住民票が豊橋市にある以上、市内の中学校に通学していることが推察できた。


司は警視庁を動かし、県教育委員会を通じて、愛知県内にあるすべての中学校・高校の在籍者名簿を調べさせた。年末年始の転出入のデータが揃ったのが昨日のこと。
そうして、やっと判明する。

姉弟が通っているのは、やはり豊橋市内の公立校だった。彼女達は両親と離れて静岡県湖西市の親戚宅に暮らしながら、越境通学をしている。






いつも拍手をありがとうございます。
今回は情報量が膨大なので、推理小説のように時系列表記にしてみました。
個人情報保護法なるものがありますが、警視庁を通じた場合は行方不明者の捜索と同じ扱いになるため、同法は適応除外とみなしています。

愛知県豊橋市と静岡県湖西市は隣接しています。
越境通学については以降のお話の中で触れますね。
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2 Comments

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2019/10/17 (Thu) 09:08 | REPLY |   
nainai

nainai  

み様

こんばんは。ご心配ありがとうございます。
私の住む地域では、今回の台風による被害はほとんどありませんでした。ですが、昨年は西日本豪雨を経験していますし、改めて雨水の恐ろしさを噛み締めた次第です。ニュースを見るたびに心が痛みます…。


さて、本編は暗い展開続きです💦 時系列表記は初の試みでした。個人的にはすっきり纏められてよかったなと思っています。
概ね事実を突き止めた類ですが、今後の動向に注目です。
つくしを追うのか、追わないのか。

つくし側の現況も気になるところです。明日の更新をお楽しみに(*^^)v

2019/10/17 (Thu) 23:40 | REPLY |   

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