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1-23

Category第1章 紡いでいくもの
 2
1-21、1-22は、初めての限定公開記事でした。
(公開するまで知らなかったのですが、限定の設定をしてしまうと、ブログ村の情報が更新されないようでした。)
限定記事は読まれない方のために、以下2話分のあらすじを記載しておきます。その後、1-23へと読み進めてくださいね。



1-21、1-22のあらすじ

つくしは類と一夜を過ごします。類に優しく導かれて初めての壁を越え、つくしは安堵の涙をこぼします。
互いへの深い愛情を確かめ合い、つくしはそんな自分達の在り方を「シンメトリー」のようだと感じます。類とは独立した個でありながらも、合わせ鏡のようにぴったりと想いを重ね合えることの幸せを強く噛みしめるのです。
以下、1-23に続きます。




「9月に両親が一時帰国する。一緒に会ってくれる?」
二人で遅い朝食を摂っているとき、類がさらりと述べた内容に、あたしは驚いて食べかけのトーストをポトリと皿の上に落としてしまった。
「…それって」
「結婚の許しを得ておこうと思って」
類は柔らかく微笑む。
「俺はすぐにでも入籍したいけど、あんたはまだ学生だし、ケジメはつけたいタイプだろ?」
「…うん」
あたしは自分の夢を叶えるために邁進中の身だ。まだ社会に出てさえいない。
結婚の2文字は、そこまで強く意識できていなかった。
「つくしの卒業を待って入籍したい。それまでは口約束じゃなくて、正式に婚約という形を取れたらと思ってる」
「類…」
あたしは嬉しさ半分、不安半分でその言葉を聞く。


何度も思った。
類の両親は本当にあたしを受け入れてくれるんだろうかって。
だって、こんなあたしだし、ああいう両親だし。
…とても釣り合いのとれる相手でも家格でもない。

あたしの不安を見透かしたように、類は言った。
「俺の両親も恋愛結婚でさ。…母は、一般家庭の出身なんだよね」
―え?
あたしは初めて聞く事実に驚いて顔を上げる。
「結婚に際しては、母の後見人として東夫妻が名乗り出てくれた」
「……っ。八千代先生が?」
「つくしも知っての通り、八千代さん自身も一般家庭の出身だ。母は夢乃さんと高校の同級生で、もともと仲が良かった。それで、父との結婚の際に相談に乗ってもらったみたい」
「…そう、だったんだ」

初めて八千代先生のアトリエに伺った日、類がついてきてくれたことを思い出す。
類と先生はごく親し気に挨拶を交わした。八千代先生が美作さんの祖母で、きっと以前から見知っているからだろうと思っていたけれど、あの親密さは、先生が類のお母さんの後見人であったからこそだったのだろう。
「つくしが不安なら、夢乃さんが後見に立つと申し出てくれてる」
「…えっ?」
「あんたの人となりは、八千代さん達がすでに両親に保証してくれてる。ね? 何も心配いらないだろ?」
開いた口が塞がらない。類が周到に根回しを進めていたことに。


「…言ってくれたらよかったのに」
あたしは無意識に呟いていた。
「先生と夢乃さんにお願いに伺ったんでしょう? あたしのこと…」
「……うん」
「それなら、あたしも一緒にお願いに上がったのに…」
すると、類は意外な反応を返した。痛い腹を探られた、というような苦笑いを。

「…少し、自信なかったからさ」
―え?
「つくしに、本当に好きでいてもらえてるのか。……結婚を前提にしての交際だけど、これから先、司よりも深く愛してもらえるのかって…」
あたしは胸を突かれて、うまく言葉が出ない。
「司を忘れられなくてもいい、いつまでも待つって言ったくせに、本当は我慢できないくらい、あんたが好きで…。だから、つくしが結婚を不安視する要因になりそうなことは、先に排除しておきたかったんだ」
「類…」


あたしはショックだった。
類がこれだけの不安を抱えていたことに。今日までそれを隠してきたことに。
『今を大事にしてください。今を!』
あたしに前に進むように強く諭した、羽純ちゃんの言葉。
『早く花沢さんを安心させてやりなよ?』
尻ごみするあたしを励ましてくれた、菜々美さんの言葉。
二人の言うことは正しかった、と心から思う。

あたしが躊躇している時間の分だけ、あたしは類を不安にさせていた。
いつも優しく微笑んでくれていたから、それに気付けずにいた。
―あたしは、類の一番の理解者でいなくちゃいけないのに…。
類にひどく申し訳なくて、あたしは俯き、涙をこぼした。


「なんで泣くの?」
「…類に…申し訳なくて…」
あたしは昨日から泣いてばかりいる。
こんなに涙脆い人間じゃなかったはずなのに。
「つくしって、昔から俺の前ではよく泣くよね」
「…だって」
―いつだって、類が優しいから泣けてくるんじゃない…。

向かいの席にいた類は、テーブルを回って隣の席に座り直すと、あたしの手を握って言った。
「でも、もう自信ついたから大丈夫」
「え…?」
「つくしが俺のこと、すごく愛してくれてるって、昨晩と今朝とでよく分かったから」
「………っ!」
何を指しているかが分かって、あたしはカッと顔を赤らめた。類は笑う。
「照れるのは相変わらず?」
「もうっ」
あたしも笑う。涙をこぼしながら。
そうして、彼とずっとこうして同じときを生きていきたいと、以前よりも強く思った。


「ご両親に会うよ。会って言う。類との結婚を許してくださいって」
「ん…」
「一生大事にしますって」
「…それは俺の台詞じゃない?」
「だって本当にそう思うもん。類のこと、誰よりも幸せにしてあげたい…」
「期待してるね」
あたし達は笑い合い、またキスをした。




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2 Comments

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2018/06/18 (Mon) 22:18 | REPLY |   
nainai

nainai  

二様

ご訪問&コメントありがとうございます。
こちらこそお手数をかけてしまい、すみませんでした<(_ _)>

第一章の山場を越えられてホッとしています。ようやくこの章も終わりが見えてきました。
今後どのような展開になっていくのか、どう冒頭のワンシーンへと繋がっていくのか、見守っていてくださいね。

2018/06/18 (Mon) 23:55 | REPLY |   

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